都営バス資料館

低公害-DPF

黒煙除去装置=DPF(Diesel Particulate Filter)とは、ディーゼルの排気ガス中に含まれる有害な黒煙の成分を除去する装置である。
かつてトラックやバスの走る姿の代名詞的存在でもあったマフラーから出てくる黒煙。ディーゼルエンジンは一定以上の温度に熱したエンジン内空気に軽油を噴射することで着火・燃焼した際のエネルギーを取り出しているが、燃料の軽油の粒子粒が大きいと、中心まで燃えつきる前に周囲の酸素がなくなって蒸し焼きの状態になり、ススとして残ってしまう。これが黒煙の原因であり、呼吸器の病気を引き起こすPM(粒子状物質)の主要因として注目され、排ガス規制でも年々基準値が引き上げられていた。

この事態に対応すべく、試験的な取り組みとしてDPFが平成6年度末に葛西・北の1輛ずつに取り付けられた。マフラーに装着して排気ガス中のPMを捕集し、黒煙の原因を少なくするフィルターである。走行中に自動的にPMを燃焼させることによってフィルターを再生するシステムが採用され、平成7年3月に葛西ではW198、北はW222に取り付けられた。W198は受皿にPMを払い落としてから燃焼するフィルター外燃焼式、W222はPMをそのまま内側で燃焼するフィルター内燃焼式である。
この装置の低減効果は、騒音・CO・NOxは一般車と変わらないが、黒煙は100%除去、その他のPMも約80%除去と絶大な効果を発揮した。当初は車体側面・背面に専用のステッカーが貼られており、前面行先脇のエコツムリマークが低公害車であることをアピールしていたが、後に側面のステッカーは外された。
car_143 ▲V-W198[塩]

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▲V-W198のステッカー(左)と、その後取り付けられたV-Z305の小型ステッカー(右) [塩]

car_142 ▲黒煙除去結果のテスト(都バス車両データ集'95、都バス資料編纂委員会より)

その後も平成8年度に2輛、9年度に7輛、11年度に2輛と少しずつ改造試験車が増えていった。

改造年度 局番 車輛数
平成6年度 V-W198, N-W222 2
平成8, 9年度 B-A415~417, E-D294, F-Z260, 261, N-Z307, L-A512, V-Z305, R-C765 10
平成11年度 E-D292, 293 2

また、E-D294は低公害EGR(Exhaust Gas Recirculation:排出ガス再循環システム)とDPFを装備した「E&D」試験車で登場した。一度排出された排気ガスを吸気側に再循環させるシステムで、吸気側から取り込まれた排気ガスは空気と混合されて燃焼室内に入る。すると燃焼室の酸素濃度が低下するためシリンダ内の燃焼がゆるやかになり燃焼温度が低下、NOxを約20%低減する仕組みだった。
D294の実験で良好な結果を示したことから、平成10年4月7日よりE&D システムを搭載したLV キュービックE&D を発売した。G代(平成12年度)の特定車でもE&Dを採用している。なお、D294には特別なステッカー等は貼られなかった。

▲EGRシステム図 (Motor Vehicle,九段出版, Vol.48 No.11 p.14) ▲E-D294

 
これまでのDPFは交互再生式と呼ばれるもので、2つのフィルタでPMの除去とフィルタ再生を繰り返す方式だった。例えばいすゞのEGRでは、DPFを並列に2個搭載し、エンジンとDPF の配管の間に電子制御にによる切替弁を設置した。片側のDPF フィルターのPM 集塵量が一定量を超えるとDPF の再生動作が開始するため、切り替え弁を用いて交互にDPF フィルターを使うことでDPF 再生動作中も車輛運行に支障が出ないようにした。
ただ再生にも限界があり、どうしても燃え切らずにススが残ってしまい、最終的には目詰まりを起こしてしまうので、一定距離を走行でDPF フィルターを交換する仕組みだった。
装置が高価で取付けの手間が大掛かりになったり、バッテリー・オルタネーター(発電機)も追加の容量が必要になったり、メンテナンスの手間も煩雑になったりで導入は本格的に進まなかった。

その後、酸化触媒とフィルターを組み合わせる連続再生式が開発された。DPFの手前に酸化触媒装置を組み合わせ、触媒反応で排気ガス中のNO(一酸化窒素)→NO2(二酸化窒素)、CO(一酸化炭素)→CO2(二酸化炭素)+H2O(水)などの反応を起こし、NO2を用いてDPF上のPMを燃焼する。酸素での燃焼より低温(500度→200度程度)で徐々にPMを連続的に燃焼・酸化して除去できる方式となっている。

▲B720
 
この方式は燃料の軽油中の硫黄成分によって触媒能力が大きく下がってしまうため、平成12年11月に都営バスでは目黒(港南)のM-B720, 721に初の連続再生式DPFを装着するとともに、低硫黄軽油(硫黄分50ppm以下)を導入した。
 
平成13年4月施行の東京都環境確保条例にて、PM 排出規制の猶予期間が平成15年10月で満了することが明記された。そのため、平成3年度(X 代)までの車は全てそれまでに除籍し、平成4年度(Y 代)~平成12年度(G 代)の車はCNG を除いて全て都の指定するDPF もしくは酸化触媒(マフラー内の酸化触媒層を通すことで、排気ガス中の一酸化炭素等を低下)の装着が必要となった。
 
このため、平成13・14年度に連続再生式のDPFもしくは酸化触媒が890輛に付けられ、あわせて平成13年4月から全車庫で低硫黄軽油を採用した。DPF装置は、三井物産(CRT)とユニバーサルキャタシステムズ(UCS)の2社のものが取り付けられた。当初は15年度までの3か年計画で装着するだったのが都民の健康を考慮して前倒しされた。
今までの交互再生式のDPF車については、同時期にZ・A代はDPF(CRT)、C・D代は酸化触媒装置に取り替えられた。詳細は以下の表の通りである。CNGバスについてはこれらの装置が不要なため対象外となっている。 また、G代特定車はE&Dシステムを装備し続けた模様。
 
F代(平成11年度)はメーカー純正の酸化触媒がいち早く装備されていたが、ディーゼル車走行規制の適合品に指定されなかったため、平成14年度に新たなメーカー純正品に交換されている。また、H代(平成13年度)以降の車は、既に都営バス独自仕様として登場時より酸化触媒を装着しており問題はなかった。
 

年代 酸化触媒 DPF(CRT) DPF(UCS)
X代(平成3年度) X516
Y代(平成4年度) Y780~790 Y631~779, 791~798, 110~144
Z代(平成5年度) Z320~332 Z220~319, 332~377 Z008~012
A代(平成6年度) A451~472 A581~590 A401~448, 482~546, 945~948
B代(平成7年度) B591~607, 626~640, 643~706, 707~753, 843~848 B706
C代(平成8年度) C762~794, 160~224, 850~863 C760, 761
D代(平成9年度) D202, 205~217, 220~222, 247, 248, 258, 259, 265~274, 292~295, 307~348, 864~872 D203, 204, 218, 219
E代(平成10年度) E402~414, 416~419, 421~440, 800~808, 873~887, 889~893, 特定車 E415, 420, 888
F代(平成11年度) F450~462, 特定車

平成16年11月に、三井物産が納入したDPF(CRT、型番SOW-301B)が指定を受ける際の性能データが捏造されていたことが明らかになり、社会問題となった。
12月に東京都を始めとする八都県市は三井物産納入のDPFの指定を取り消したが、混乱を避けることから「現在取り付けている車については、当面の間取り消しの効力は及ばない」とする経過措置が取られた。
 
都営バスでは影響を最小限に抑える目的で、事業運営上支障のない範囲でこれらの車の使用が抑制され、発覚後は対象車を優先的に休車(平日2割、休日6割程度)とした。その後もヒアリングの結果適当な代替品がなく、改良品の供給時期が不透明なこともあり、早期に使用を取りやめることとなった。
 
この時点でDPF(CRT)を装着していたのは249輛で、M代の新車代替で除籍した分を除くと119輛が残っていた。このうち109輛は、平成17年度の早期に新車(N代)を入れて前倒しで除籍することになった。特にA代のリフト車は、本来ならばあと1年以上は使う予定だったところの前倒しで、予期せぬ早期離脱となってしまったと言える。
C代以降に装着されていた10輛は酸化触媒方式に交換された。
 
また、R代(平成19年度)の路線車※からは、再生制御式になったDPFが登場した。
いすゞ車はDPD(Diesel Particulate Defuser)、日野はDPRと呼ぶ機構である。
後に三菱はDPF、UDからはUDPCという名で同様の機構が登場した。
※観光車はP代(平成18年度)から同様の機構が登場

いずれもフィルターに一定量のPMが堆積した時点で、自動的に再生モードに切り替わる。
アイドリング中に排気ガスを高温のまま維持し、セラミックフィルターで捕えたPMを排気に含ませた燃料の軽油を用いて効率的に燃焼し、フィルターを再生するシステムである。
  
008_04 のコピー ▲早期除籍となったA 代リフト車[塩]

これ以外では、N代(平成17年度)以降の日産ディーゼル車を初めとする尿素SCR方式が採用されている。酸化触媒を通した直後の排気ガスに尿素と水を混合した「アドブルー」という水溶液を還元剤として噴射し、排気ガス中のNOxから酸素を取り除いて水と窒素に分解するシステムとなっている。

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