都営バス資料館

行き先表示(液晶)

バスの行き先表示としては、ロール状の乳白色のバックライトフィルムに印刷したものを回転させる方向幕が幅広く使われていた。多色使いや自在なレイアウトができるという利点もあったが、内容の追加・変更時のコストは無視できないもので、各車の内容を交換するなると作業量も多かった。
欧米ではドット単位で自在に文字を表示できるマグサイン式の行き先表示が採用されたが、漢字など複雑な文字の多い日本では普及しなかった。そこに登場したのが液晶式の表示である。表示の切り替えが簡単にできること、さまざまなパターンを収録できること、書き換えが比較的容易なこと、音声合成装置との連動性や表示部の汚れも少ないことがメリットとして挙げられる。
併せてLEDの試験をしたところもあったが、LEDの表示の消費電力が無視できないほど大きいため当時は主流とはなりえなかったようで、電気をなるべく食わない方式として液晶が模索されたようだ。
  
都営バスでは平成8年2月に登場した品川のB657に試験的に採用された。一定の大きさのドットマトリクスパネルを縦横に連結することで既存行先表示器の大きさに合わせたものが当てはめられた。前面は48*48のパネルを横に5枚(240*48)、側面もフルドット式という意味では解像度という意味で現在のLED よりも優れていた。従来の方向幕との整合性を取って、丸ゴシックを採用したのも特徴と言える。
 
▲[L]
指月電機製作所、山陽電機製作所といったメーカーが液晶式の行き先を手掛けていたようだ。都営の採用メーカーは不明であるが、以下のバスラマの記事写真から類推するに山陽電機製だろうか。
なお、都営バス関連で山陽電機製の液晶といえば、昭和63年に都営バスで初採用となった液晶式の乗降中表示灯が挙げられる。バス車外の液晶表示では最初の例となったようだ。
▲バスラマNo.34(平成8年3月号) p.31 京都市交通局の液晶試験車の側面写真

▲乗降中表示灯 現在はLED式[き]

しかし、最大の欠点は見づらいことだった。一昔前のモノクロのノートPC か電子辞書のような液晶でコントラストは低く、明るい屋外ではバックライトの色が負けてまともに見えないという有様だった。特に運用の制限はなく、ビッグサイト臨に現れたこともある。
文字の大きさの組み合わせも制限があり、長い停留所名の表示は適宜省略された場合もある。暗いところでも文字の色も薄かったため、見えやすかったとは言えない。結局、都営バスでは平成12年に方向幕に戻してしまった。
▲[塩]

▲前面[塩] ▲側面[塩]
▲背面[塩]

他事業者でもこの時期に相次いで試験的に採用された。同じくバスラマによれば、平成5年12月に大分バスに1輛導入したのが営業車初とされる。
近隣だと横浜市営・相鉄が、それ以外でも北海道中央、秋田市営、国際興業、三重交通、京都市営、鹿児島市営などで試験的に採用された。
把握している車は以下の通り。事業者によって、大まかに黒地と白(グレー)地の2通りの表示があったほか、古参車を改造する例も見られた。
終車等の青・赤灯はバックライトの色を切り替えたようだが、見やすいとは言えず、各社とも数年で取り換えるなど採用は広がらなかった。

都営バスでは平成13年度からLED(発光ダイオード)を試験的に採用し(上)、平成16年度からは新車全車がLED になった。多種類の表示が可能で屋外でも見やすさを確保し、メンテナンスに優れることもあってLED は全国的に急速に普及した。都営でも品川・深川・江戸川といった方向幕のコマ数の多い営業所は優先的にLED 化されている。液晶の果たせなかった目的を実現したと言える。単色が基本など見た目の分かりやすさには制限があるが、近年は各メーカーがフルカラーLED 対応の製品を発表しており、今後にも期待したい。
 
採用事業者の一例 型式は一部ネット情報による
北海道中央バス 三菱(MBM) KC-MM719J改 札幌22か2896 平成x年に方向幕化
北海道中央バス 日野(日野) KC-HU2PPCE 札幌200か78 平成x年に方向幕化
空知中央バス 日野(日野) KC-HU3KPCA 旭川22か1115 平成9年に液晶、平成1x年にLED化
苫小牧市営バス (1輛)
秋田市営 日デ(富士) KC-RM211GAN 秋田22い779~783(134~138号車) 平成10年に別の車に移設、平成12年までに方向幕化
秋田市営 日野(日野) リエッセ 秋田22き53, 54(65, 66号車) 平成12年までに方向幕化 
関東鉄道 日野(日野) KC-RJ1JJAA 土浦22あ2035(1771TC) 平成10年登場、平成1x年にLED化
ジェイアールバス関東 日野(日野) KC-HT2MMCA 土浦22あ1845~1847(M527-96303~5) 平成8年登場、平成1x年にLED化
国際興業 いすゞ(いすゞ) KC-LV380L 大宮22か3126(9903号車) 平成11年に方向幕化
横浜市営 いすゞ(川重) P-LV314L 横浜22か6417, 6421(8-1314, 1318号車) 平成8年に液晶改造、日本語・ローマ字の交互表示
相鉄バス いすゞ(富士) KC-LV380L 横浜22か8887(2655号車)、横浜22か8888(2656号車) 平成12年にLED化
三重交通 いすゞ(川重) P-LT312J 三重22き35(3606号車) 平成7年末に液晶改造、平成12年にLED化
京都市営 いすゞ(いすゞ) KC-LV280L 京都22か6260,6261 平成7年末に液晶、平成10年に方向幕化
高槻市営バス 大阪22あ7419
西日本ジェイアールバス いすゞ(いすゞ) KC-LV380L 石川22き777(521-6404号車) メーカーの全国キャラバン車として採用? 平成8年登場、平成11年頃に方向幕化
大分バス 日野(日野) K-RE101 大分22か715(12300号車) 平成7?年に液晶改造
大分バス 日デ(富士) U-RM210GSN 大分22か2002, 2003(22187, 22188号車) 平成16?年にLED化
鹿児島市営 日デ(富士) KC-UA521NAN 鹿児島22き829 平成8年に液晶、平成12年頃に方向幕化
鹿児島市営 日デ(富士) U-HU3KMAA改 鹿児島22き752, 753 平成9年に液晶、平成12年頃に方向幕化
※追加情報提供いただいた皆様、ありがとうございました

参考文献:バスラマNo.34(平成8年3月号)

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