平成30(2018)年12月25日、交通局のリリース通りスカニアのフルフラットバスが[都02](大塚駅~錦糸町駅)にて営業を開始した。平日ダイヤのみ運行の模様で、朝~12時頃、16~20時頃の中休ダイヤ固定で運転されている。前半・後半でそれぞれ大塚駅~錦糸町駅を2往復し、大塚駅~巣鴨車庫は回送となる。
初日は何かあったとき用に続行営業で伴走車がついていたようだが、特にトラブルもなく無事に運行された。
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▲運行開始日の[都02] (五)
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車輛についていくつか。
車体は軽量アルミニウムで作られており、万が一の衝突事故にも耐える強度を持っている。エンジンルームをリアに集中させて床高さを低くし、また客席スペースを既存車輛に近い空間を確保したことから車長は1104cmで、B~D代エルガと比べて50cm長い標準尺相当となっている。幅は249cm、高さは318cmとなっており、一般的なノンステップバスよりも車高は高めである。また、フロントオーバーハングも一般的なノンステップバスよりも50cm程度長い。このため、国産車とは運転感覚がかなり異なる部分もあるようだ。
車内も高さが感じられ、座った場合の見晴らしはL代の固定窓に近い感覚となっている。
▲フロントオーバーハングの違い(下(Yoshitaka))
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外観で目立つのは、液だれを防止する給油口・尿素水口の真下に貼られた銀色の金属板だろうか。外にあった扉用と思われる非常ボタンは特に日本語の注意書きもなく"EMERGENCY"が目立っていたが、営業開始時までに埋められた。給油口などは並んでいて間違えを防止するためか、フタを開けるとフタ側に「軽油」などと大書されている。前扉はグライドスライドドア、中扉はプラグドアを搭載。中扉は燃料電池と同じメーカーのものである。中扉に反転式スロープ板と可搬式スロープ板が搭載されているのは交通局の既存車と同じである。
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運転席操作系は欧米仕様をそのまま踏襲しており、ATのセレクタボタンはR・N・Dしか存在しない。
ほとんどのボタンがピクトグラムによる表記となっている。JRバス関東のスカニア製ダブルデッカー車は後付けで日本語表記をテプラで作成したのに対し、こちらは当初から日本語表記が取り付けられている。「非常用ハンマー」の表記があるが、非常扉以外にも海外のように備えているのだろうか。
▲運転席
自家用車の輸入車と同じくウインカーが左右逆である。メーター類は左側にエンジン回転計、右側に110km/h対応の速度計。二つのメータークラスタの間にインフォメーションモニターを搭載している。そして都営バス向けの音声合成装置モニタ・操作盤等を搭載していることから、運転席はかなり機器が詰まっている印象となっている。
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▲車内座席配置、最後尾の1.5人掛け
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車内座席レイアウトは既存車輛になるべく近い座席配置だが、最後尾から2列目はタイヤハウスに1人掛け椅子が取り付けられている。最後列は非常口通路となるため、跳ね上げ可能である。床材は今までと異なり、滑り止めでザラザラした材質の木目調となっている。
当初は最後尾から2列目は1.5人掛けの座席が取り付けられていたが、営業前になって1人掛けに交換された。優先席は現在の国土交通の標準仕様とは異なり、横向きである。真下に燃料タンクがあるためだろう。その代わり、最前列は両側に座席がある。
混雑時にも奥まで詰めやすくはなったものの、後輪タイヤハウスの都合もあり通路や最後列の座席はやや狭い。そのため、他に人がいた場合の出入りはやや難がある。
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また、オリジナル仕様で一部の壁(左右6席)にはUSBポートが取り付けられており、コードを持参すれば充電ができる。渋谷の1輛のみ試験的に付けられて以来増えなかったが、ここにきて今の時代に見合ったありがたい取り組みだ。
▲USBポート。使用時は光る(名ばかり)/座席モケット
取り付けられている座席はヨーロッパ車らしくFRP成形のややや固めの座席のようだ。ドイツのKiel(キール)製で、これも軽量化と製造のしやすさを目的としたのだろう。モケットはフルフラット専用の特注品で、みんくると都のシンボルマークを組み合わせた幾何学模様となっている。輸入時は一般席が黒、優先席が赤の模様のモケットだったが、後にみんくるモケットに張り替えられたようだ。一般席は青色、優先席は水色となっており、中扉直後の4席も優先席化された。このため計7席となっている。
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▲最前列直後の謎の箱(物置き防止)、天井の照明
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照明はLEDライトが両脇から照らす間接照明となっている。メーカー標準機能で、ドア開からドア閉後しばらく経つまでは照明が明るくなる。乗客が車内移動をするタイミングなので、暗くならないようにしているのだろう。
中扉天井には燃料電池と同じタイプの横長の次停留所案内液晶が取り付けられて、後ろ側からも見やすくなっている。前扉寄りの天井に「つぎとまります」のような表示や次停留所装置を埋め込めるスペースがあり、海外では活用されているが、今回は中扉上の装置があるため、該当部分は単なるアクリル板のオブジェとなっている。
▲車内後方から、表示器部分のアップ(五)
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吊り革は横向きの優先席の部分だけツルツルの黄色、それ以外は持ち手の部分がデコボコしてグリップしやすい灰色のものが取り付けられている。このタイプの吊り革は都営バス初。前面・背面の局番札はなく、前扉にも局番表記はない。そのかわり、フロント上と最後尾中央に局番が書かれており、スカニアの立体ロゴが輝いている。
▲スカニアロゴ