都営バス資料館

低公害-燃料電池(実証実験)

平成27年7月に、都営バスにて燃料電池バスの実証実験が非営業ながら実際の東京の道路を走行した。ここではその様子を紹介しよう。
 
運行されたのはトヨタ自動車主導で開発・製作した車輛である。2輛製造したうちの1輛で、1輛は豊田市のコミュニティバスである「とよたおいでんバス」豊田東環状線(豊田市駅~三河豊田駅)で名鉄バスが営業運行を本年1月から開始している。そしてもう1輛がトヨタ保有の自家用車輛で、こちらが今回の東京都での実証実験に貸し出された。
トヨタ・日野自動車は平成28(2016)年度を目処に燃料電池路線バスの導入を目指して計画しており、とよたおいでんバスでの実験結果に加え、渋滞や車線変更が多く停留所間隔が短い都市部での水素消費量などの走行実績データや実際に運転する乗務員の操作性等のフィードバックを得る目的での運行となった。
 
東京都は平成32(2020)年の東京オリンピック・パラリンピックにおける虎ノ門・新橋~臨海部のBRTと合わせて観客・選手輸送に活用することを公表しており、舛添都知事の発言でも平成27年度(B代車)から燃料電池バスを導入すること、またオリンピック開催までに100輛規模で導入していきたいむねの発言があった。今後都営バスが燃料電池バスを本格導入した際にスムーズに運行開始できるようするための試験という目的もあったのだろう。
01_03 (Custom) ▲都庁でお披露目(濱)
トヨタは以前より、燃料電池車は長距離走行が必要な大型車に、一方電気自動車は短距離走行での利用や小型車に適しているというポリシーだった。電気自動車は走行距離を伸ばすためには搭載する電池の容量を増やす必要があり、その分重量がかさんだり電池コストが高くなったりするデメリットがある。燃料電池車であれば、水素ステーションの設備は必要だが、燃料となる水素タンク容量を増やすだけで走行距離を伸ばすことができるため、結果的にコストアップが緩やかになるという。
トヨタは10年以上前から燃料電池車を製造し、都営バスや愛・地球博の会場シャトルバスで営業実証実験を行っていたほか、高速運転や連続走行距離が長い東京空港交通でのリムジンバスにおける実験運行も行われており、それらが今回の開発へとフィードバックされていった。

車輛について

01_04 (Custom) ▲(濱)
ベースとなる車は日野自動車のブルーリボンシティ
ハイブリッドで、トヨタの燃料電池乗用車「MIRAI」にて採用している燃料電池技術とハイブリッド技術を融合させた「トヨタフューエルセルシステム」(以下TFCS)を搭載した。定員は77名(座席26+立席50+乗務員1)となっており、車体軽量化のため窓の材質はガラスでなくポリカーボネートを採用している。
TFCSの内部には高圧水素タンクと燃料電池本体である「FC(燃料電池)スタック」、さらにFCスタックが出力した電圧を駆動用モーターが必要とする電圧まで昇圧する「FC昇圧コンバーター」や、燃料電池の出力を充電し、起動時や加速時に駆動用モーターに電気を送る駆動用ニッケル水素電池バッテリーなどが含まれている。FC昇圧コンバーターにはSiC(シリコンカーバイド)ダイオードを採用することで燃費向上を図っている。今回運行したトヨタ燃料電池バスにはTFCSを2組搭載している。
 
MIRAIに搭載されているTFCSのFCスタック出力は114kW(駆動用モーターの出力は113kW)に対し、燃料電池バスには110kWモーターを2個搭載し、駆動モーターの最大トルクはMIRAI(335Nm)の2倍となっている。
MIRAIも燃料電池バスも70MPaの高圧下で水素を蓄える大容量高圧水素タンクを搭載しているが、大きく異なるのは高圧水素タンクの数だ。2本計122.4Lのタンクを搭載するMIRAIに対し、燃料電池バスは8本計480Lとなっている。
ただし、水素を満充填した場合の走行距離はMIRAIの約650kmと比較すると、車輛の大きさや重さから空車で350km走行となっており、営業状態かつエアコン作動などを加味しても最低150kmの走行は保障している。路線バスは一日の運行区間・距離が決まっているため、走行可能距離がMIRAIよりも短くても課題とはならないという判断なのだろう。実際の路線バスの場合1日の車輛運用が150kmを越える運用もありうるので、適用領域を広げていくと今後の課題になるだろう。
 
車内座席レイアウトは一般的なノンステップバスと同じ座席配置で中扉以後は2人がけ×2となっているが、エンジンルームがない分最後部座席の段差がないというメリットがある。なお、中扉以降の座席については非接触給電試験車のW777号車で採用していたFRPのカラフルな椅子となっている。
02_02 (Custom) (五)

車体もブルーリボンシティハイブリッドをベースにしているとはいえ、全く意匠が異なっており、中扉に至ってはプラグドアを採用している。これも車体軽量化が目的だろうか。
発進時はモーターの音のみで低騒音だが接近に気づきにくいため、プリウスで採用しているような発進時には音が鳴る装置を採用している。
前面は都営バスの証であるイチョウマークが付けられ、前面・背面には一般車と同じく「みんくる」シールが貼られた。

もう一つの特徴

トヨタの燃料電池バスのもう1つの特徴は、建物などに電力を供給する発電所としての機能を有していることである。
車輛に内蔵した「FCバスV2H(Vehicle to Home)システム」を用いることで、燃料電池バスの水素タンクに高圧水素ガスを最大約20kg充填した場合、最大出力9.8kW、300Vの直流電力を最大約50時間連続供給可能だという。これは体育館の照明使用電力量を約100kWh(1日12時間点灯)とした場合、約5日分の電力に相当する。
車体リアのパネル内に設置されたCHAdeMO(チャデモ)規格を採用した充放電コネクタと豊田自動織機とデンソーがそれぞれ新開発した受電機器をケーブルで繋ぐことにより、商用電源で使われる交流へ変換し、100または200Vで家電製品に電気を送ることができる。
 
このシステムは「V2Hガイドライン2.0」にも対応しており、異常時のフェイルセーフも強化している。運転席にはV2Hのインジケーターランプも取り付けている。非常時以外のV2Hによる家庭への電力供給と、スマートコミュニティの電力ピークカットに貢献する電力平準化の新たな手法としても考えられている。
02_01 ▲(五)

都営バスでの実証実験

01_07 (Custom) 03_06 04_00 (Custom) 04_04 (Custom) ▲実証実験走行時(濱、五、Yoshitaka)
「都心ルート」は渋谷営業所から新宿、環七、新目白通り、明治通り、外苑東通り、天現寺、麻布、六本木などを走って渋谷営業所へと一周するルートで、「臨海ルート」は深川営業所から勝どき、門前仲町、永代通り、新木場、ゲートブリッジ往復、お台場、レインボーブリッジ、海岸通り近辺を回って深川営業所へと戻るルートが設定され、それぞれ赤羽橋近くにある水素ステーションで充填を行った。詳しくは下図を参照。
 夜間留置については営業所には置かず、トヨタ関連施設に回送していたようだ。
03_03 (Custom) ▲渋谷車庫での取材シーン
 

もう一つの試験要素

 燃料電池バスとは直接関係がないが、今回の試験にあたっては交通局の全面協力のもと、前面LED行き先表示がオージ製の全面フルカラーの表示器が取り付けられた。
 今年から沖縄などでフルカラーのLED行先表示器が登場し始めているが、コストの関係もあって左側の一部がフルカラーになったのみで、多彩な表示と言うには物足りないものだった。
 今回はどの事業者でもまだ実用化していない全面フルカラーで、「燃料電池バス」や「東京都交通局」の表示のほか、みんくるのカラーイラストが入った「都営バス」表示、既存の系統の表示を試験的にフルカラー化したもの、さらにはBRTを見据えたのか「B-1 国際展示場駅」のような表示まで計22コマが作成され、停車時に随時表示されていた。
 法令上の懸念があるためかは不明だが、残念ながら走行すると自動的に表示がOFFになる仕組みとなっていたが、方向幕に劣らない表示方法として全面カラーは本採用に向けてぜひ期待したい。

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