都営バスの車は「局番」で管理されているため、新車から除籍されるまで局番は変更されないのが原則である。しかし何事にも例外はあるもので、同じ車でも局番が変わってしまう例がある。それは用途変更に伴うもので、以下の3つに分けることができる。
特定車への転用
導入してから年月の経った貸切車を特定車へと転用するもの。リフト装備がないため、肢体不自由児の用語学校以外で使われた。百の位を0から9に変える例が多かったが、既にその番号が使われているときは適宜空き番号に改番した。
養護学校等の輸送のために運行する特定バス事業の開始は年表上では昭和48年10月からとなっているが、それ以前から観光車を特定用に転用した車は存在した。「交通局60年史」には昭和46年3月現在の配置表があるが、その中には特定車として20輌が計上されている。このときは、昭和30年代に配属されて観光車として活躍したC~F代(昭和34~37年度)車が中心であった。これらの車は元の車号に900を足したたもので、C904~F921の各車が存在した。
これ以外にも、当時は特定車として一般路線車を転用したものも存在した。さほど年数が経たずに除籍された車を転用したもので、特定バス事業を正式に始めた直後の昭和48年度末は特定専用車16、観光転用車13、一般転用車4輌となり、F947(←F247、いすゞBA741)・G972(←G172、いすゞBA741)・H994(←H494、三菱MR480)などが存在した。この番号変更を見越したのか、昭和48年の専用特定車の導入時には961から番号が始まった。
昭和49年度にはB代の特定車が大量に入籍する中で、観光車や一般車由来の特定車は急激に数を減らしていき、一般車からの転用車は昭和49年秋にG972が除籍されたことで一旦幕を閉じる。
これ以降、千住・江戸川の4輌分については、しばらくの間観光転用車の枠として、新しい観光車が入るたびにお古が転用され、最古参の転用車が除籍されるというサイクルを繰り返した。
▲R-P943 [塩]
また、杉並の枠は消滅したものの、渋谷に転用枠が1つ誕生した。昭和54年3月にS483(三菱MR410)が他の同期より先行して一般車から外れ、S983として特定転用されたのである。久しぶりの一般車からの転用となり、昭和57年4月まで特定車として活躍した。これが最後の一般転用車となっている。
渋谷の枠については、S983の除籍後は観光車の転用枠に変更され、平成3年度のX941導入に伴って特定専用車に変更されたようだ。
千住・江戸川の観光転用枠はその後も残り続けたが、平成10年度末までに全て除籍された。これをもって特定バスは全て専用車で運行されるようになった。
年度 | 転用前の局番 | メーカー | 型式 | 転用年月 | 転用後の局番 | 除籍年月 |
S34 | C004 | 三菱 | AR470 | B-C904 | ||
S35 | D005 | いすゞ | BR151P | R-D905 | ||
S35 | D006 | 三菱 | AR470 | H-D906 | ||
S36 | E007 | いすゞ | BR351P | E-E907 | ||
S36 | E008 | いすゞ | BR351P | H-E908 | ||
S36 | E009 | いすゞ | BR351P | C-E909 | ||
S36 | E010 | いすゞ | BR351P | M-E911 | ||
S36 | E011 | 日野 | BD15P | R-E910 | ||
S36 | E012 | 日野 | BD15P | D-E912 | ||
S36 | E013 | 三菱 | AR470 | K-E913 | ||
S36 | E014 | 三菱 | AR470 | B-E014 | ||
S36 | E015 | 三菱 | AR470 | H-E915 | ||
S36 | E016 | 民生 | 4RA92 | C-E916 | ||
S37 | F017 | 民生? | 4RA92? | Y-E917 | ||
S37 | F018 | いすゞ | BR20P | G-F918 | ||
S37 | F019 | 日野 | RB10P | A-F919 | ||
S37 | F020 | 三菱 | MAR470 | K-F020 | ||
S37 | F021 | 民生? | 4RA92? | L-F021 | ||
S42 | N022 | いすゞ(川航) | BU15P | S49.3 | D-N922 | S50.10 |
S42 | N023 | いすゞ(川航) | BU15P | S49.3 | R-N923 | S55.9 |
S42 | N024 | いすゞ(川航) | BU15P | S50.3 | R-N924 | S56.5 |
S42 | N025 | いすゞ(富士) | BU15P | S55.9 | R-N925 | S57.4 |
S42 | N026 | 三菱(富士) | MAR470 | S50.6 | H-N926 | S55.9 |
S42 | N027 | 三菱(富士) | MAR470 | S50.3 | H-N927 | S55.9 |
S42 | P028 | 三菱(三菱) | MAR470 | S55.9 | H-P928 | S57.5 |
S43 | R029 | いすゞ(川航) | BU15P | S56.5 | R-R929 | S57.5 |
S43 | R032 | 日デ(富士) | 5RA104 | S56.5 | H-R932 | S57.4 |
S44 | T034 | いすゞ(川重) | BU15EP | S57.5 | H-T934 | S58.5 |
S44 | T035 | いすゞ(川重) | BU15EP | S57.5 | R-T935 | S58.3 |
S44 | T036 | いすゞ(川重) | BU15EP | S57.5 | R-T936 | S61.4 |
S44 | T037 | 三菱(三菱) | B806L | S57.5 | B-T937 | S60.6 |
S44 | T038 | 三菱(三菱) | B806L | S57.5 | H-T938 | S59.5 |
S45 | W040 | 三菱(三菱) | B806L | S58.5 | H-W940 | S60.6 |
S45 | W043 | 三菱(三菱) | B905N | S59.5 | H-W943 | S61.6 |
S48 | A045 | いすゞ(富士) | BU20KP | S60.6 | B-A945 | S62.5 |
S48 | A046 | いすゞ(富士) | BU20KP | S60.6 | H-A946 | S63.9 |
S49 | B047 | いすゞ(川重) | BU20KP | S61.6 | R-B947 | H1.5 |
S49 | B048 | 三菱(富士) | B905N | S61.6 | H-B948 | H1.5 |
S50 | C050 | 三菱(富士) | B905N | S62.5 | B-C950 | H2.8 |
S55 | H051 | いすゞ(富士) | K-CRA580 | S63.10 | H-H951 | H3.8 |
S55 | H052 | 三菱(三菱) | K-MS613N | H1.5 | H-H952 | H3.8 |
S56 | K053 | いすゞ(川重) | K-CRA580 | H1.5 | R-K953 | H3.8 |
S56 | K055 | 日野(日野) | K-RV742P | H2.8 | B-K955 | H3.6? |
S57 | L058 | いすゞ(川重) | K-CRA580 | H3.8 | H-L958 | H5.8 |
S57 | L060 | いすゞ(川重) | K-CRA580 | H3.8 | R-L960 | H5.8 |
S57 | L061 | 三菱(呉羽) | K-MS613N | H3.8 | H-L961 | H5.8 |
S58 | M063 | いすゞ(川重) | K-CRA580改 | H5.8 | H-M963 | H8.1 |
S59 | N066 | 日デ(富士) | P-RA52R | H5.8 | H-N966 | H9.2 |
S60 | P067 | いすゞ(川重) | P-LV219Q | H5.8 | R-P943 | H10.3 |
S60 | P068 | いすゞ(川重) | P-LV219Q | H8.1 | H-P950 | H10.3 |
S61 | R069 | いすゞ(IK) | P-LV219K | H9.2 | H-R951 | H11.3 |
※資料館調べ。除籍年月は不正確な場合があります
深夜急行への転用
深夜中距離・深夜急行バスに参入する際、ある程度年数の経った貸切車を転用することになり、90番台に改番した。
当初は新橋駅→金沢文庫、新橋駅→千葉駅に参入する予定で平成元年12月に品川のK054、江東のK057をそれぞれ路線向けに改造してK090、K091と名乗った。行先方向幕、降車ボタン、車外スピーカー、放送装置、発券機兼運賃箱を新設している。書類上の局番変更は平成2年2月となっている模様。
▲D-M093[塩]
諸般の事情で当初予定の2路線には都営参入が見送りとなり、平成2年6月に銀座→三鷹の開業向けでK090を杉並に転属、K091は平成2年12月の上野駅→春日部駅西口に転用して千住転属となった。
その後も経年の車が次々と転用されたが、春日部は平成6年で撤退。三鷹は平成12年12月に撤退して車ごと共管の関東バスに移籍し、これらの転用車は姿を消した。
なお、N095は路線廃止で除籍されなかったため、一般路線車の番台(N499)に改番され、2回も改番された珍車となった。ちなみに、路線車への転用というと後年のお台場快速バスも同様であるが、こちらは改番はなされなかった。
年度 | 転用前の局番 | メーカー | 型式 | 転用年月 | 転用後の局番 | 除籍年月 |
S56 | K054 | 日野(日野) | K-RV742P | H2.2 | D-K090 | H5.8 |
S56 | K057 | 日デ(富士) | K-RA51R | H2.2 | H-K091 | H3.8 |
S57 | L062 | 三菱(三菱) | K-MS613N | H3.8 | H-L092 | H5.8 |
S58 | M064 | 日野(日野) | K-RU607AA | H5.8 | D-M093 | H9.3 |
S59 | N065 | 三菱(呉羽) | P-MS713N | H5.8 | H-N095 | H8.3 |
H 2 | W077 | 日野(日野) | U-RU2FTAB | H9.3 | D-W097 | H12.12 |
路線車の改番
1例のみ存在する。葛西営業所登場時に導入されたZ444(昭和47年度)が、登場してすぐの11月にZ400に改番されている。理由は不明だが、縁起が悪いと思われたのだろうか。それまでにも444の車は多くいたが、これ以降は忌み番の42と49に挟まれているためか番台ごと飛ばされる例が多く、平成11年度のF444まで待たなければならなかった。