都営バスが、平均してどれくらい車輛を長く使うかというのは財政状況にも左右される。
以下に、年ごとの「年度末の平均車齢」と、「その年度に除籍した車の平均車齢」の推移を示す。前者は、どれくらい車輛が若返っているか、また後者はどのくらい長く車を使ったか(=平均使用年数)という指標になる。
かつての昭和時代の大まかな基準は、10年40万kmというというものだった。それが昭和50年代の財政再建により、昭和40年代の都電代替で大量に入れた車を長く使って新車を抑制する方針となり、それ以前の基準より長く使うようになっていった。
昭和50年代中盤からは新車も多く入れるようになったため、車齢は若返っているが、昭和40年代の古参車が大量に在籍していたため除籍車の平均車齢自体は上がっていった。
この天気となるのが昭和60年度である。財政再建による縮小から都市新バスに代表される積極策へと転じたのと同時に、都電代替世代の車をほぼ全て置き換えた時期にあたる。
ここからは除籍のサイクルも早くなっていき、W・X代(平成2, 3年度)の排ガス規制対策で大量に新車を入れた時期で若返りはピークを迎えた。平均使用年数が10年未満となり、平均車齢は4.6年と新しい車ばかりの事業者になった。
ただしこの傾向が続いたわけではなく、将来的な大江戸線の開通による減車も見据えたうえでの大量導入という側面もあった。バブル崩壊後の利用客減少と大江戸線全線開業の延期もあり、平成11年度からは極端に新車が抑制され、古参車を延命させることで平均使用年数は12年へと伸びた。
平成12年の大江戸線改編による大幅な除籍で平均車齢は若返ったが、使用年数は恒常的に12年になった。以後、しばらくの間使用年数は12~13年、平均車齢は6年程度と横ばいになる。
平成15年からは自動車NOx・PM法によるディーゼル規制で、大都市圏のKC-規制車以前(~F代)は、「最初の登録日から満12年経過して次の車検満了日まで」となった(DPF装置など排ガス規制基準に適合したものを除く)ことも関係しているのだろう。
平成23年度以降は平均車齢がどんどん上昇しているが、以下の理由で平均使用年数を昔よりも伸ばしている。
・東日本大震災後の赤字問題で新車が抑制された
・バスが昔よりも長持ちするようになった
・数が年間170輛と多いH・K・L代(平成13~15年度)が古参になり、車齢を押し上げた
・在籍車の置き換えが進み、ディーゼル車規制にただちに引っ掛かる車がいなくなった
近年では東京近郊では割と長持ちする事業者となっているが、今後はどのような使用方針になっていくのかは気になるところだ。
▲除籍年度と、各年度ごとにどの年式の車を除籍したかの表(一般路線車のみ 青字の[1]などは試験車)
例えば、「D代('76年度)」は、縦の列で見ると1986年度に1、87年度に58、88年度に18輛が除籍されていることが分かる。
また、平成27(2015)年度は、横の列で見るとH代('01年度)が89輛、K代('02年度)が10輛除籍されていることが分かる。
どの年度に除籍されたかは都営バス資料館の独自調査のため、実際は車によって差が出る可能性があることに注意。