都営バス資料館

低公害-IPTハイブリッドバス

平成21年度~23年度にIPTハイブリッドの実証実験が行われた。「非接触大電力充電バス」とも呼ばれるもので、あらかじめ車庫・停留所等の路面に電気を供給するコイルを埋め込み、その上に停車した車両が車両床下に搭載した車載コイルを通じて給電を行う方式のハイブリッドバスである。バッテリーへの急速充電は高電圧大電流が必要となり危険が伴うことへの対策として、電磁誘導の原理を利用した非接触給電方式を採用した。
2020年の温室効果ガス削減目標を達成すべく、今まで以上に低公害車輌である電気バスを開発・運行するために今回のデータを今後に生かす計画である。
排気ガスを出さず、電気だけで動く次世代のエコカーとも目されており、停留所に停車するシステムの路線バスに適したシステムとして期待されている。
国土交通省 都市・地域整備局 街路交通施設課の試算結果によれば、東京都交通局の場合、車輌数と1車あたり走行距離、平均系統延長から、片道辺りの必要な充電時分は約8分と計算されている。
しかし、電動バスを本格的に運行するには、様々な障壁が存在している。車輌コストを低減させるには、運行中での充電は不可欠だが、バッテリー装置と容量や充電装置がネックとなる。国交省では「ターミナル充電型運行」「ターミナル+途中継ぎ足し型運行」「バス停毎充電型運行」の3パターンを考慮しているが、いずれも路線バスの運行スタイルから考えると、充電性能的な観点では短所長所がある。
加えて、現行法では公道上に非接触給電装置が設置できない(都05系統での実験時、東京駅丸の内南口と晴海埠頭のターミナルは、いずれも公道上ではないため今回・前回共に実験に適しており法的部分もクリアしていた)ことや、非接触給電装置のインフラ整備及びメンテナンスの問題、車輌に搭載するバッテリー容量と充電の兼ね合いといった問題が残っている。今後はこれらの条件もクリアして、次世代の路線バスの開発が進むことを期待したい。

T代(平成21年度)

平成21年4月にT175が深川に配置され、1ヶ月間実証実験を行った。
この外にも羽田空港で実験が行われたが、本年度は初の営業路線での実証実験として[都05](東京駅南口~晴海埠頭)で運転された。
実験ということもあり、充電装置は車庫のみに配備されたため、電気だけで走行可能な距離は15kmと長くはなく、平日のみ2往復となっていた。5月には除籍され、わずか1ヶ月の在籍であった。
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▲S-T175[五]

V代(平成22年度)

平成23年2月にV777(ACG-HU8JMFP改)が深川に配置され、平日に運行された。
T175と同じく[都05]で走行した。局番はV777となり、T175と同様に日野BRCハイブリッドの標準尺で、ポンチョで用いている小型エンジンを搭載した。T175とは異なり最後部まで座席があり、試験運行時は最後部にて関係者がデータ収集を行っていた。
この車輌の核となる非接触給電装置については昭和飛行機工業株式会社の製品を搭載した(T175はボンバルディア社製)。路面などに設置された充電装置で急速充電によって純電気バスとして運行できるほか、ディーゼルエンジンとの併用によりハイブリッドバスとしても運行可能で、走行中にバッテリーが切れるなどして電気バスとして運行ができない状態(バッテリー低下)になると、自動的にハイブリッドモードに切り替わるって運行が継続できるようになっている。
V777の非接触給電装置は床下の他に車体側面に設置された非接触給電装置が大きな特徴である。側面装置のために車輌の車体幅が若干長くなるため、車輌のリア部分には車幅を記載して注意喚起を行っている。
充電装置は車体には60kWのコイルを搭載し、地上側に設置された1次コイルを近づけることにより急速充電を行う。その際の伝送効率は約92%となり、T175のIPTシステムよりも高効率化が図られている。
現在は側面コイルを用いた充電システムについては、充電は人の手を介さないと出来ないが、将来的には自動的に充電が行えるように研究が進められている。床下にも非接触給電装置が取り付けられており、東京駅丸の内南口と晴海埠頭で充電に用いられていた。

また、床下以外に車体側面にも給電装置を装備しているのが大きな特徴で、車体幅が広くなるため、車両の後面に「全幅2525mm」と記している。床面充電機器は[都05]の起終点の東京駅丸の内南口・晴海埠頭に、側面充電機器は深川営業所構内に設けられた。
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▲S-V777[五] car_147
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▲位置合わせと充電の様子

W代(平成23年度)

平成23年12月2日~18日の約3週間、東京ビッグサイトで開催された東京モーターショーおよびエコプロダクツの開催に合わせ、IPT(非接触式充電)ハイブリッドバスが実証実験として豊洲駅~東京ビッグサイトの送迎バスを運行した。無料運転のみで、営業系統には入らなかった。
局番はS-W777(ACG-HU8JMFP改)となった。まず特徴的なのは外観である。平成23年11月に東急テクノシステムにて車体外装・内装を含めて近未来的なデザインへと改装した。白をベースに黒いラインのくまどりが入ったような前面や、流れるラインのような屋根、のっぺりとした背面はいずれも非常に印象的なデザインで、後輪カバーも特徴的である。車体は昨年度の実証実験で用いたV777と同じで、よく見ると日野のハイブリッド車の外側に装飾を被せたことが分かる。
元のボディに前面・側面や屋根も含めて新たな構造物で覆ったような感じで作られているため、車内から見ると前面のセーフティウィンドウはそのまま残っているのが見える。車内の座席はFRP(繊維強化プラスチック)製の座席に交換して軽量化を行い、天井照明もボーイング787のようなLED照明にすることで省電力化が図られている。硬めの椅子はマゼンダから青・紫のビビッドな色合いのものを並べており、手すりは明るい黄緑色と、全体的な見た目の派手さは随一と言える。
一般的な電気自動車と同様な電力供給機能を搭載し、単相200Vおよび100Vの電気をバスに搭載した発電機(軽油燃料)から供給可能である(バッテリーからも電力供給が可能かは不明)。V777のときは、床下のほかに車体側面に非接触給電装置が設置されたが、W777は非接触給電装置が床下のみ設置されている。
背面の乗降中ランプは中央に配置され、真っ白なデザインにアクセントを与えている。充電中は「非接触/充電中」の表示が交互に出るのが面白い。また、路上給電が運転席からの操作で行えるようになり、より実際の運行に近づいた形で試験できるようになった。
フル充電までの所要時間は約20~30分で、走行できる距離は電気自動車モードの市街地走行時で約15km、ハイブリッドバスとしての走行で約300kmが可能だ。駆動部分では、エンジンに日野ポンチョと同等の排気量4,700ccのエンジンと、電気バス部分の177kW(240PS)のエンジンを組み合わせている。
車内は運転席後ろの液晶ディスプレイに走行状態が出るのは以前と同じだが、黄緑色の握り棒と赤紫・青・紫の目を引く硬めのバケットシートが特徴的で、従来の椅子よりも軽量化を図ったようだ。

今回の実験の目的は、より実用化に向けたステップとして、バス乗務員による車輌側からのセルフでの給電制御および停留所の路面(バスベイ)に設けられた充電コイルへの正着性を調べるのが目的となっている。前回の非接触給電の場合には操作するために地上係員が必要であったが、より実際のバスの運行に近づけた形での実験となった。
そのためにバスベイに停車目標を、またバス車輌側にはフロントガラス中央にカメラを設置し、運転席脇のモニター内(下写真右上)に表示された色つきのガイド枠に停車目標を合わせることで停車位置の把握を容易にしている。そして、同じく運転席脇のバッテリーモニター(下写真左上)の充電ボタンを押すことで、車体に取り付けられたBluetooth無線機から発電機へ信号を発信し、自動的に充電制御が行われるようになっている。

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▲s-w777[五]

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▲運転席後ろのディスプレイ、運転席回り、座席[五]

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