青梅とそれ以外の都営バスの車輛を見比べると、乗降方式が都区内とは異なるため色々な違いが見られる。昭和60年8月より中乗り前降り整理券の運賃後払いへと変更になるにあたり、先代のN代(昭和59年度)から先行して仕様を変えた。これが後に続く青梅仕様として導入されることになった。それまでは、ワンマン化以降も前乗りの申告制前払い(乗車時に乗務員にに降車停留所を申告して運賃を支払う方式)だったため、仕様は23区内仕様車とほぼ共通であった。ここでは、その青梅仕様を紹介していこう。
なお、八王子支所の車輛は後払いに変更する前に路線が廃止になったため、このような特徴的な仕様の違いは現れなかった。
側面方向幕の位置
N代の導入当時、側面方向幕の位置は都区内・青梅ともに中扉戸袋の隣であったが、P代より前扉直後に改められた。それに対して、青梅仕様はP代でも中扉から乗車する乗客が見やすいように元の位置のままであった。その後、新車として青梅にZ・A代の大型車が導入されたときは、中扉直後への設置に改められ、C・D代の中型車もこの仕様となった。
▲W-P835 青梅仕様[き] |
▲M-S816 都区内仕様[o] |
▲W-Z302 青梅仕様[き] |
▲V-Z246 都区内仕様[き] |
▲W-H231 青梅仕様[五] |
▲Y-H209 都区内仕様 |
H代(平成13年度)には青梅初となるノンステップバスが3両導入され、側面幕は当初の中型車と同じく戸袋直前となった。都区内仕様は前扉直後であったが、運転席からの側面確認に死角が生じることもあったのか翌年度のK代車より全車青梅仕様の位置に設置するようになって標準化が図られた。そのため、23区内所属車が青梅支所への転属が容易になったとも言える。その証拠か、K・L代のHRは青梅に多く転入しているが、H代HRの転入例はない。なお、それ以前に転入したW代中型車・X代大型車については、位置を移設せずに使用していた。
▲W-W872 転入しても変わらず [き]
バスロケーションシステム用アンテナ
青梅管内には都区内で行っているようなバスロケーションシステムが長らく導入されなかったため、アンテナは取り付けられていなかった。ただし、P代(平成18年度)車は当初からバスロケ用アンテナ(下)が取り付けられていた。平成22年頃よりバスロケシステム更新に合わせ、青梅の全車に新型アンテナが搭載され(上写真右)、支所の車庫入口にはアンテナ感知器が取り付けられた。乗客向けの運行案内も平成24年度から始まっている。
▲P代のバスロケアンテナ(丸囲み) [北]
▲S代のバスロケ取り付け前・後(丸囲み) [北]
車外スピーカーと乗務員通話マイク
入口付近に設置されている車外スピーカーは、青梅仕様は乗車口となる中扉前にある。
都区内から転属した車輌は、元から取り付けられていた前扉付近と増設された中扉付近の2箇所設置されているため、転属車であることの判別が容易だった。運転手と外から会話をする場合は、前乗りなら前扉から話しかければよいが、中乗りだとそれも難しいため、連絡手段としてインターホンと車外マイクが取り付けられている。なお、車外マイクについては国交省標準ノンステップ仕様が前乗り・中乗りにかかわらず導入できるような仕様で策定されたため、都区内仕様でもM代車からは中扉にマイクが標準搭載されている。
▲Z・A代の中扉回り[五] |
[塩] |
乗降方式&自由乗降表示の札
青梅所属車の必須メイクアップアイテムと言っても過言でない各種サボ。都区内仕様車とはひと味違う都営バスのイメージに上がっている。前面には「後のり」サボが常に掲示されており、前乗り路線が混在する田無・保谷近辺では重要な表示となる。そして[梅74][梅76]の運用に入る際に使われるのが「フリー乗降区間柳川以北」。柳川以北は停留所以外の場所でも停車する事を示す札で、前面・背面に表示される。
赤字で「このバスは停留所以外でも停車します」と書かれており、乗客向け以外に、「突然停車する可能性あり」と後続車に注意喚起する役割も担っている。昭和60年6月のフリー乗降区間採用当初は[梅74]用に「岩井堂-青梅第十小」・「柳川-岩井堂」、[梅76]用に「柳川-上成木」の3種類が用意されたが、平成元年に区間拡大で[梅74]は「柳川-柳川(上下に岩井堂、青梅第十小の表示あり)」の表示になった。平成10年頃からは「柳川以北」に改められた。
▲[梅76]用 前面[L] |
▲[梅76]用 背面[L] |
▲初代[梅74]用 岩井堂-青梅第十小[き] |
▲初代[梅74]用 岩井堂-柳川[き] |
▲2代目[梅74]用 柳川-柳川[き] |
▲現在の札 その1[き] |
▲現在の札 その2[五] |
▲現在の札 その3[五] |
また、[梅78]は全区間フリー乗降ではあるものの、スクールバスという性格もあってか特に掲示はなかった。また、運用都合の関係でフリー乗降区間サボが[梅74][梅76]以外の路線でも表示されたままの状態になることも多く、'90年代の時点でフリー乗降のサボは掲示されていないパターンの写真も多く見られる。背面は特にまともに掲げられている写真の方が少数派だ。
「後のり」サボには書体や地色の緑色の濃淡で数種類存在しているほか、通常は左側の「後のり」が右側に差さっている場合も。また、これ以外には車内前面の局番札脇に「共通定期券取扱車」のサボを提げていたが、平成23年より共通定期の表示が行き先LEDに表示されるようになり、省略されるようになった。これらのサボ表示が行われる都合で、「ノンステップバス」の表示位置が23区内とは異なり、ステッカーによる表示が行われている。
乗降中表示灯
リアの「乗降中」表示器が、都区内仕様車は助手席側に取り付けられているのに対して、原則として運転席側に取り付けられていた。
対面通行区間の多い青梅管内の路線において、停留所停車や自由乗降車区間停車時に後続車に、客扱いしているという注意喚起という意味合いで運転席側に取り付けられたのだろう。ただし、新車でもZ代のみ例外で扉側についていた。
また、都内からの転属車については、中型のW代は移設したものの大型のX303はそのままであった。H代のHRからは仕様が共通となったため、この違いも過去の話となっている。
▲W-N801 [き] |
▲M-S811 都区内仕様[き] |
▲W-Z304 [き] |
▲W-H231 [五] |
★中扉と車外灯
中扉の上には車外に蛍光灯が取り付けられている。これは乗車時に足下を照らして安全を確保するもので、中乗りの事業者ではおなじみとも言える。また、Z・A代の大型車は、中扉が引き戸で導入された(この時代の標準仕様は4枚折戸)。目立つ特徴だったと言える。その後に導入されたC・D代の中型車では4枚折戸となった。
都区内仕様でも、V代(平成22年度)から中扉の足下灯は標準仕様として取り付けられるようになった。
▲Z代
▲W-C856[五]
整理券発行機・乗車口
青梅独特の車内装備で目立つのは、多区間後払いに対応した整理券発行機と中扉のカードリーダーである。当初、整理券発行機は奈良工業製で、後に三陽電気(レシップ)製に統一された。
整理券発行機は当初はインク式の整理券発行機で、2桁の数字はそれぞれの車に固有に振られていた。この発行機を入れたN代の最初(N800)を01とし、そこから連番で振って行ったものと思われる。
また、このときの三陽製は「S3」という表示のものがあるが、どの車を指しているかは不明。
▲整理券発行機(平成5年) |
▲3代目整理券発行機[北] |
平成5年のバスカード導入の頃に感熱式の整理券発行機に交換した。その際に整理券には整理券番号の他に局番と乗車日が印字されるようになっている(上写真)。現在では整理券発行機のシステムも更新し、レシップ製のサーマル式整理券発行機LTM01を搭載する。なお、磁気のバスカードシステム導入時は複数メーカーでの導入となったが、青梅のみ三陽電機製を導入した。また、平成19年からPASMO/Suicaの読み取りユニットを取り付けており、平成22年7月をもってバスカード。なお、整理券発行機の設置台は新車はメーカー標準品を使用しているが、青梅転入改造車については交通局の整備工場が一つ一つ手作りで整理券発行機の設置台を作っているらしい。
▲整理券の例
運賃箱&運賃表
▲平成13~26年の運賃箱
運賃箱は、都営バス唯一の三陽電機製のものを搭載していたが、平成13年度の運賃箱の更新で小田原機器の都交通局専用モデル「LT」を搭載した。23区内向けとの相違点は、小銭の両替ガイド取り付けや磁気カードリーダーの降車動線にあわせた向きの変更が行われている。ただし、ベースが前乗り用のために、小銭両替の硬貨投入口が前乗り乗車に便利な運賃投入口より前についている。また、投入金は自動計算されるものの、整理券発行機が他社製品のため、バーコードを読み取っての運賃自動表示が使えない。
平成26年に現在の型に交換された。
運賃表はレシップ製となっている。平成12年頃には運賃表上部に次停留所表示が行われるタイプに交換された。そして平成23年に液晶2画面式の運賃表に交換が行われた。他事業者でも幅広く使われており、2停留所先まで表示する機能も備えている。新運賃表の表示はメーカー標準のテンプレートとなっている。「発車します」のときの都営バスイラストが出てくるほか、みんくるイラストが出てくる場合も。ちなみに一部の車に限られるが、貸切利用時に児童向けの「みんくる間違い探し」などいくつかの遊び用表示が用意されている。
▲平成5年 |
▲平成20年 |
前扉手すり形状
前扉からの降車となるため、前扉の手すり形状が23区仕様と異なり、降りるときにつかまりやすい形状になっていた。今では全てノンステップとなったため、過去の話となった。
室内運転席直後の室内灯
夜間の運転席部分の遮光の目的で、運転席直後の室内灯には前側に遮光カバーが取り付けられている。なお、最近青梅へ転入した車輌はカーテンとなっている。
▲蛍光灯カバー[北]
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運転席
以前は、運転士の行路表が他とは異なる大型サイズとなっていた。これは運用が1仕業で複数系統を乗務するダイヤ構成となっているためだろう。他にも整理券発行機と運賃表の集中操作盤が取り付けられているが、設置場所は統一されておらず車種によって異なっている。なおHRでは運転席の左側にある都合上、行き先表示を設定する機械が運転席右側に移っている。23区内からの転属車に関しても、右側への移設工事が行われている。
▲W-X303 運転席 [北]
▲L代 運転席