都営バス資料館

経営計画2025(案)を発表、電気バスは10台・燃料電池バスは累計100台を目指す

交通局は令和7(2025)年2月13日に、経営計画2022の案を発表した。通常は3年ごとに発表している中期計画で、前回の経営計画2022に続くものとなる。.
今回は案の公表により、「広くお客様・都民の皆様からのご意見を募集」と銘打って
期間は3月14日までで、インターネットの専用フォーム、郵送による提出を受け付ける。
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この経営計画は、交通局を取り巻く事業環境の変化をふまえて、各事業が抱える課題の解決に向けて今後3年間の交通局の経営の方針や行う事業とともに、財政収支計画もあわせて示すものである。
策定にあたっては、少子高齢化や労働力人口の減少に加え、物価や労働単価の急騰といった環境のもと、お客さま目線に立った輸送サービスの提供、まちの活性化、環境負荷低減といった都の政策と連携した様々な価値を提供するための事業を並べている。

p.20 経営理念

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p.11 都営バス事業の現状

経営の見通し

都営バス(自動車運送事業)では、すでに令和5(2023)年度の決算で営業・経常ともに黒字を達成しているが、令和7(2025)年度以降経常赤字は順次縮小するものの、企業債の償還などで累積資金残の急な減少が見込まれるとされる。
挙げられた令和7年度と比較して、令和5(2023)年度の決算ではすでに経常黒字が16億2千万円(償却前損益は53億の黒字)で、コロナ禍で悪化した繰越損益は116億9千万円の赤字に減少しているが、繰越損益はそこから再び増加する見通しとなっている。庁舎改修費用などの減価償却費の増による赤字の増額がどの程度になるか気になるところだ。

自動車運送事業の収支計画の見通し

交通局を取り巻く事業環境と今後の経営の方向

交通局の事業を行う上で環境として、今回はまず「公共交通の担い手不足」が一番に挙げられている。人手不足はここ数年急速に全国各地でみられる動きであるが都営交通も例外ではなく、「将来にわたり事業を継続するための体制づくりが不可欠」とされている。

p.18 交通局職員の年齢層は50代以上に偏っており、大量退職が見込まれるが応募倍率は大きく減少

また、23区の人口は2045年をピークに減少に転じる予想となっており、長期的には公共交通の乗客数の増加が期待できないこと、また通勤者数はリモートワークの定着により今後もコロナ前に戻らないであろうこと、一方移動需要は回復しており、インバウンド需要はさらに増加が見込まれることが述べられている。

その他、物価の高騰、世界的な気候変動、自然災害の激甚化、技術革新の進展といった要素があり、これらを解決すべく目指す姿を「誰もが円滑に移動できる公共交通」など最初の図の5つの要素に分け、それぞれ目指す方向性が述べられた。

本記事では、これらの具体的な取組について都営バスに関連するところを中心に紹介しよう。都営バスに関する新規の記載は2022に続いて少なめで、積極的な投資関連の項目も少ないのが残念なところではある。

誰もが円滑に利用できる公共交通

施設や車両の利便性・快適性向上

バスでは「停留所上屋・ベンチの整備」のみ。老朽化した上屋の交換のほか新設も3か年で45棟、ベンチは90基整備と数値目標が示された。これ以外はバリアフリーは既にノンステップ化で達成されたということかフルフラット等の記載も特にない。

情報案内の充実

バス接近表示の更新・都バス運行情報サービスのリニューアルが触れられた。現在の都バス運行情報サービスは機器更新してから10年以上が経過したが、どのような表示やサービスとなるのか気になるところ。
新型の液晶式案内は既に入札が告示されており、そう遠くない時期に登場しそうだ。

また、車両中央天井部のモニターは引き続き新車導入にあわせて設置されることが記載されたが、導入数の記載はなし。導入を取りやめているフルカラーLEDについては記載がない。

前回から加わった項目としては、外国語による問い合わせに乗務員が円滑に対応できるような「AI翻訳機の導入」があげられる(一部路線のみ)。

p.36

輸送需要への対応

「バスについては、乗務員の確保が厳しさを増す中、需給の変化を見極めながら、効率的かつ効果的な路線運営に努めます。」との記載があるのみで、臨海部への対応など個別の要素については触れられていない。到達目標についても特になしとなっている。

移動を軸にした多彩な価値の提供

都営交通や沿線地域の魅力発信

近年、都営交通のコラボイベントが増加しているが、引き続き民間企業・沿線自治体とイベントを企画し活性化をはかることをかがれた。2027年度に年間9万人のイベント参加者数を目指す。

p.42 連携企画の事例

また、最近は露出度がますます増えている「みんくる」については、魅力的なグッズ展開・イベント開催などを通じて都営交通の認知度向上や新たなファンの獲得を図るとのこと。

p.43 マスコットキャラのPR

乗車サービスの充実

クレジットカードのタッチ決済は地下鉄に乗車できるサービスの全駅拡大が明言(2025年度)されたが、都営バスについては特に記載がない。

スタートアップとの連携強化

space cool(放射冷却素材)の実証実験など、スタートアップ連携の事例を今後とも増やす模様。2027年度までの3か年で6件の連池を目指す。

まちづくりとの連携

新宿支所周辺の再開発について、以下のように記載された。現在の再開発事業の計画図では新宿支所の敷地は含まれていないように見えるが、対象にしてどのように姿を変えるのか気になるところ。

「西新宿三丁目西地区第一種市街地再開発事業」に参画することで、木密地域の解消等の周辺まちづくりに貢献するとともに、バス営業所をリニューアルします 

なお、同じように近隣で再開発が持ち上がっている北品川地区(品川営業所)についての記載は特にない。

安全・安心な交通機関

安全に関する教育・指導の徹には、ドライブレコーダー・運転訓練車の活用で乗務員の特性を踏まえた的確な指導を行うこと、運行管理者の指導力強化などが触れられている。
バス車両の安全装備については、既存の新車で既に対応済だが、左折時警報装置や障害物を検知するソナーセンサー、くもり止め用のヒーターガラス等を備えた車両を引き続き導入する。

また、浸水対策・地震対策・噴火対策について訓練の実施など対応力の向上を引き続き実施するとのこと。

老朽化した施設・設備の維持更新

バス営業所など交通局が所有の地上建築物の修繕・改修等を計画的に進める。現在は臨海支所が建て替え中で、青戸支所の建て替えに伴う設計の入札も行われているが、具体的な場所への言及は特にない。

脱炭素でエコな移動手段

モーダルシフトの促進

公共交通の環境優位性や、燃料電池バスの導入など都営交通の環境負荷低減の取組を積極的にPRを引き続き行う。

p.66 環境負荷低減の取り組み

更なる省エネの推進

バス停留所・標識柱の更新の際のLED化を推進する。以前からの継続的な取り組みで、2027年度までにバス停留所上屋60、標識柱300基をLED化とのこと。
また、バスの運転状況や燃料消費量を記録するエコドライブ用機器の活用により、省エネ運転を図り、燃料消費の抑制に努める。現状も音声合成機器にエコドライブ用の記録装置が同居しており、必要に応じて活用するのだろう。

ZEV化の推進

燃料電池バスを累計80両運用しており、2025年4月には水素ステーションが有明営業所構内に初開設される予定。他社ではEVバスが急速に広がっているが、都営バスはあくまで燃料電池バスが本筋ということか、2027年度に「累計100両導入」との目標示された。燃料電池は6年で原則リース満了となるが、今後のリース満了分の取り換えだけでも達成されそうな数字と言える。
これに比べると電気バスの導入はかなり慎重な記載で、2027年度までに「10両程度の導入を目指す」とれた。充電設備の確保や一回の航続距離といった要素にまだ難点があるようだ。

p.68 ZEV化の推進

再生可能エネルギーの活用

上記と合わせ、北営業所などに太陽光発電設備を設置し、EVバスへの充電について検証を行う。

持続可能な事業運営

人材確保や業務改善が主に述べられているが、都営バスで興味深いのは「業務システムを再構築し、データ連携の効率化等により職員の負担軽減を図ります。」という部分だろうか。また、現在実証実験中のAIカメラによる乗降客数調査に加え、バス自動運転技術の実証実験を都営バスのエリア内で行うことが示された。現在は京王バスが主体となって新宿駅西口~都庁地区で継続的に実験を行っているが、この取り組みに参画するのか、別の地域で行うのかは不明。

p.80 事業運営を支える執行体制の構築

また、はとバスへの委託については「公共交通の担い手が不足する中にあっても、グループ総体として安定した事業運営を図ります」以外は特に記載はない。

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