平成30(2017)年18月に、平成31(2019)年度の予算原案が交通局Webサイトにて公開された。
予算の基本方針としては、東京2020オリンピック・パラリンピックを控え、質の高いサービスや、大会の成功に向けた取組を着実に進めるため、以下の3点を基本として据えている。
・将来の厳しい事業環境にあっても、中長期的に安定した事業運営を行える強固な経営基盤を確立するため、限られた経営資源を最大限に活用し、これまで以上に増収に努めるとともに、より一層無駄の排除を徹底するなど、ワイズ・スペンディング(賢い支出)で都民ファーストの視点に立った取組を推進すること。
・翌年度に迫った東京2020大会期間中における輸送の主力を担う公共交通機関として、安全で安定的な輸送及び快適で利用しやすいサービスの提供を実現するため、関係機関と密接に連携しながら、万全の準備を行うこと。
(https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/about/information/budget/pdf/budget_31_01.pdfより)
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本年1月頃には原案をブラッシュアップした「予算案」が公開予定となっているが、公開項目自体は予算原案→予算案でほぼ変わらないため、原案を紹介することにしよう。
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まず、業務の予定量として、期首在籍車両数は乗合1,496、貸切5の計1,501輛となっている。現在は乗合1,482(スカニア5、しおかかぜ1を含む)+貸切5+研修車3となっており、乗合の部分を比較すると14多い。今年度の予算案では期首の1,476は予算と実績が等しくなっていたが、大きく増車になるのかどうか注目だ。ただし、年間走行距離は平成30年度予算原案の4,763万kmから4,730万kmへと減っており、全体としては本数の大幅増加は見込めないかもしれない。
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輸送人員は一日平均67.8万人(前年度予算比+8,300人)を見込む。決算時の乗客量よりも数%多い業務量を見込むのが通例だが、引き続き乗客数は増加傾向が続くと見込んでいることが分かる。また、交通事業会計は営業外収益の減少による減収減益の予定だが、自動車運送事業は増収減益を見込んでいる。
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具体的な都営バスにかかわる概要は以下の通りである。
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ドライブレコーダーの更新
老朽化したレコーダーの更新が挙げられている。
平成30年度予算…2.42億円 → 平成31年度予算…5.31億円
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新たなバスモデルの展開
デジタルサイネージの活用による駅から車内まで連続した情報案内の提供など、誰もが利用しやすい新たな路線バスのモデルを展開となっている。フルフラットバスについては特に触れられていない。デジタルサイネージの活用(都営バス構想2020も参照)がメインとなっているようで、当初の経営計画では既に施行→拡大となっているはずの新たなバスモデル自体の成り行きが気がかりなところ。昨年度に比べてかなり控えめな額となった。
平成29年度予算…6.19億円 → 平成30年度予算…8.98億円 → 平成31年度予算…1.62億円
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臨海地域の公共交通の整備
臨海地域において新たな営業所の整備を進め、路線の拡充により交通事情に的確に対応とある。前年度から大幅に増えているが、有明の整備絡みだろうか。これ以外も期待したいところだ。
平成29年度予算…5.16億円 → 平成30年度予算…9.76億円 → 平成31年度予算…37.8億円
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オープンデータ化の推進
都営バスに限らず、都電・都営地下鉄・舎人ライナーともに「局独自のデータ公開用サーバを構築し、各種データを順次提供」となっている。期待したい。
平成30年度予算…2.79億円(新規)
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燃料電池バス車輛の導入
導入予定数はついに書かれなくなった。昨年度は30輛と記されていたが、実際は10輛程度である。昨年度の予算の倍なので60輛程度のリース予算はありそうだが、オリンピックまでに「最高」70輛導入とどう折り合いをつけるか次第だろう。
平成29年度予算…6百万円 → 平成30年度予算…5千9百万円 → 平成31年度予算…1億2,300万円
地下鉄・バスにおけるLED照明化の推進
平成29年度予算…2.74億円 → 平成30年度予算…4.79億円 → 平成31年度予算…4.66億円
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バス停留所へのソーラーパネルの設置
本年度の予算で新たに加わったもので、同程度の予算が来年度も確保されている。
平成30年度予算…6,500万円(新規) → 平成31年度予算…7,200万円
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今までにあった「オープンデータ化の推進」「低公害ノンステップバス車両の導入」の欄は特に見られない。一般車は別途導入の入札が出ているが、十数億のオーダーが見込まれるものの主要事業の扱いではないのだろう。