交通局は平成29(2017)年9月7日、「都営バス構想2020」と題して、2020東京オリンピック・パラリンピック大会に向けた取り組みを発表した。
主に「フルフラット型ノンステップバスの導入」「充実した案内を途切れることなく提供」という2つの取り組みからなっている。
フルフラット型ノンステップバスの導入
既に日経新聞などでの報道はあったが、交通局からの公式発表は初と思われる。'90年代後半のノンステップバス初期に登場したフルフラットバスは中扉から後ろの傾斜や座席への段差も目立っており、高コストだったこともあって国内メーカーは製造から撤退してしまった。
今回公表されたイメージ図では、「更なるバリアフリーを追求」として、中扉から後半の通路への傾斜を可能な限り低くし、車内後部までほぼフラットな平面を実現している。これにより、前方に乗客が集中する混雑を緩和するようだ。
後部座席の高さも今までのノンステップよりかなり抑えられており、これがノンステップバスの真打ちとなるだろうか。中扉以降は4列となっており、1列目のみ座席削減仕様となっているように見える。
「傾斜をバリアフリー法及び関連条例で定める建築物の傾斜路の基準1/20(約2.9 度)以下に抑えた大型路線バス」として日本初のフルフラットと名乗っているようだ。従来のフルフラットノンステップバスで傾斜が6~8度近くまであった設計とは一線を画しており、その分機器類を車体の最後尾に集めているのだろう。
メーカーや導入台数などは明らかにしていないが、平成30(2018)年度から運行開始となっている。D代車で登場することになり、実物が楽しみなところだ。
(追記)
9月8日付日経新聞朝刊によれば、「18年度にはフルフラットバス29台の導入を予定」と明記されている。導入する路線は検討中とのこと。
また、交通局に独自に追加インタビューを行った「乗りものニュース」の9月8日付記事によれば、エンジンは横置きに、ドロップアクスル(車軸)の工夫により段差解消につなげたとのコメントが掲載されている。メーカーは「国内外になるのでは(交通局担当者)」と記載されている。一気に29台入れるとなると、今までのような試作で1~2台だけという事情とも異なるために海外製の可能性も十分ありえる。その場合、車体幅や国内向け仕様への追従がどの程度なされるかは気になるところ。
▲交通局のリリース添付文書より 左が従来型、右が新型フルフラット
充実した案内を途切れることなく提供
乗りたいバスが分からないという問題に対する案内の強化として、「分からない」を解消すべく総合的に行う取り組みが発表された。駅からバス停でバスに乗るまでの各種案内の充実が謳われており、既に実施されているものもある。
★駅ホーム……駅の案内板
★駅改札/駅前広場……駅デジタルサイネージ
★駅通路……バス乗り場案内サイン
★バス停……バス停デザイン・接近表示
★バス車体……行き先のカラー化・路線名のアルファベット表示
★バス車内……車内デジタルサイネージ・デジタル路線図
以上のように場所に応じた案内を充実させる(リンク先は今までのニュース記事)ことを意図している。
今回の目新しい部分は「車内のデジタル路線図」だろう。イメージ図では中扉上に設置され、系統の停車案内を分かりやすく示した図が書かれている。鉄道で最近流行のドア上の停車駅案内表示液晶のような感じだ。
このうち、「行き先のカラー化」「デジタル路線図」は昨年の経営計画2016で新たなバスモデルの取り組みとして発表されたものだが、今回は特にその文言は見られない。新たなバスモデルは予定通り実施されるのか、もしくはこの取り組みが全系統を対象とするように広がるのかは不明で、続報待ちというところだろう。
▲「都営バス構想2020概要版」より抜粋。多くのPLANは既に実現が始まっているが、今後はハードの整備だけでなく、分かりやすい表記も求められていきそうだ