令和6(2024)年1月20日、東京タワーにて都営バス100周年記念イベントが開催された。久しぶりの都営バスイベントとなり、撮影会には整理券が必要となるなど人数を絞ってではあるが、多数の参加者で盛況に開催された。主な内容は記念ラッピングのお披露目やみんくるぬいぐるみ(大)の販売、撮影会とミステリーツアーとなるが、それぞれ紹介していこう。
朝の準備
イベントの朝は早く、展示・ミステリーツアーに使う復刻車は各地を日の出に出庫、7:30頃には現地に到着するスケジュールとなっていた。東京タワーの裏手から駐車場に順序よく並び、ここで復刻ラッピングの6台の中身が明らかになった。
また、後の展示車となる観光車・燃料電池なども早くから現地に到着しており、人員輸送やぬいぐるみの段ボール輸送(燃料電池)も兼ねていたようだ。
以降は交通局の職員が集まってテント設営が進み、8時になると行列が目立つように。1月5日の追加案内で撮影会は枠を分けて人数上限ありの整理券入場制になっており、行列自体は1つだけで、受付で希望の枠を言い整理券を受け取るシステムで、1番目の枠が一番人気だった。
1グループ…ラッピング車両撮影会・100周年セレモニー 10:30~12:00 整理券200枚
2グループ…ラッピング車両撮影会・バスツアー出発式 12:00~13:00 整理券250枚
3グループ…都営バス現行車両撮影会 13:00~14:00 400枚
また、人気が見込まれる「みんくるぬいぐるみ」の販売列は会場外にタワーの坂に沿って整理券とは別の列が作られていた。当初のアナウンスでは11:00から販売開始となっていたが、行列が伸びたため10:20頃には販売を開始していた模様。
ラッピング車両撮影会
10:00から開始。復刻ラッピング5台と100周年ラッピング1台の計6台が展示されていた。車の内訳は次の通り。全てG・H代のMP38で統一されており、前回の90周年時のエルガとは車高が腰高になったことと合わせて受けるイメージはかなり異なる。G781のみ既報の通りフルカラーLEDに交換されており、それ以外は白単色のままとなっている。
B-H863…昭和20~30年代の緑灰塗装
P-H894…昭和30~40年代の都電塗装(クリーム・マルーン)
H-H959…昭和40~50年代の美濃部色(青・白)
V-H971…昭和54~56年度車の鈴木色(赤・黄)
S-H714…昭和57年度~の緑ナックルライン
E-G781…都営バス100周年塗装
撮影会は後ろほど立ち位置が高くなるひな壇などはなく、手前にマスコミエリアも設けられたため、撮影会といえども先頭集団で入らないと綺麗な撮影はなかなか難しい状態だった。
10:50頃になるとセレモニーが開始。司会は都営バスの車内放送を一手に引き受けている鐡井静寿子さんで、「都営バスをご利用いただき~」のアナウンスで会場を沸かせた。
続いて登場したのは久我交通局長、広報誌にも長らく寄稿している特別ゲストの泉麻人さん、そして小池東京都知事と「みんくる」。都知事は能登半島の地震を引き合いに出しつつ、都営バスも関東大震災の復興からスタートしたことに触れ、人と地球にやさしい取り組みをアピールしたスピーチを行った。触覚や動きにキレのあるみんくるとともに泉さんのあいさつの後、合図とともにラッピングの特別表示の点灯式が行われた。左から「Since1924」「ありがとう」「100周年」「これからも、」「この街と皆さまと」「祝都営バス100周年」の前面表示が点灯し(100周年のみ各面の表示もあり)、知事らは退場し再び撮影会となった。
ミステリーツアー
第二枠、12:35には「シークレットバスツアー出発式」が開催された。事前に応募して当選した180名が6台のバスに分乗し、それぞれガイド付きで特別なルートをを巡るバスツアーに出発した。出発式にはみんくると交通局長・泉麻人さんが登場しあいさつで盛り上げていた。事前に12,000人ほどの応募があったとのことで、かなりの倍率だった模様。
バスは東京タワーを左折して出たバスは隊列を組んで慈恵医大、祝田橋、内堀通りから行幸通りを通り東京駅丸の内口へ、そこから左折し大手町・代官町・三宅坂と皇居を一周し、ここから各方面に分かれていった。なお、シークレットツアーの際は各車共通で「都営バス100周年」の表示だった。まずは各車の紹介から。塗装の詳細については都営バスの塗装(一般路線車1)も参照。
戦中戦後のバラバラな塗装から統一されたデザインに。昭和20年代から昭和34(1959)年頃まで採用された。胴体の上半分から窓側はカスケードブルー、下半分と屋根上はモスアゲートグレー、スカートはフェザードグリーンとなり、帯色はオレンジ色である。前面のデザインのへこみはボンネットバスの鼻を前提としたデザインだった。
昭和34(1959)年に登場した都電と色調を合わせたクリーム色にマルーン色の帯の塗装。都電と都営バスの塗装を合わせて改めることになり、警戒色で事故防止に役立つ黄色をベースにする案が採用された。まず都電が先に塗り替わり、バスも同年に徐々に塗り替わっていった。
昭和43(1968)年6月に美濃部知事(当時)の提唱で塗装を改めることになり、色彩の専門家の研究の上配色が決定された。知事の名をとって「美濃部色」と呼ばれることも。クリーム(アイボリーブルー)地に水色(スカイブルー)の帯をまとった。
G代(昭和55(1980)年度)が最後となり、それ以前の車も車体更新の際に塗り替えられていったため、昭和63(1988)年6月に消滅。
昭和55(1980)年にミニバスに試験的に導入され、昭和56(1981)年3月導入のH代一般車から全面的に採用された黄色地に赤帯の色彩。当時の都知事の名で「鈴木カラー」とも。事故防止と乗客増加策の一つとして、明視性の高い黄色を基調とした。
しかし急に変わったこの色彩は不評を呼び、採用は昭和56年度車までとなった。その後、車体更新で緑塗装への塗り替えが続き、昭和63(1988)年には消滅した。
昭和57(1982)年5月(K代後期)より登場した塗装。クリーム地にスカートはグレー(ベージュ)、側面の緑色の斜めに走る「ナックルライン」が特徴的な配色となっている。これ以前の車についても、昭和57年以降に車体更新したものについてはこの塗装へと変更された。平成9(1997)年のノンステップバス登場は徐々に割合を減らし、平成25(2013)年3月限りで姿を消した。
100周年記念塗装。現在の塗装のオレンジ・緑をベースに、みんくるを各面に配置している落ち着いたデザイン。復刻塗装はイラスト調にあしらわれている。
シークレットツアーの経路はトップシークレットとされ、開催後に判明したものを上図に記す(一部推測)。渋谷・小滝橋は国会から赤坂見附・四谷見附(迎賓館)から赤坂御所・外苑を進み、明治神宮前(原宿駅)から分かれて渋谷車は渋谷駅・渋谷車庫へ、小滝橋車は都庁から新宿駅西口で終点に。
巣鴨・千住は内堀通りから日比谷・数寄屋橋から東京駅・中央通りを北上し、上野駅から両大師橋を渡り上野公園へ。そこから分かれ、巣鴨車は言問通りを春日駅から小石川植物園を回り込むように外堀通りに入り、聖橋(御茶ノ水駅)で終点。千住はかつてのトロリーバスに沿うように言問通りを進み、かっぱ橋道具街から浅草雷門・押上駅で終点となった。
江戸川は巣鴨と同じく晴海通りを下り、大回りして新大橋通りから環状二号に入る湾岸ルートへ。豊洲市場から有明・フェリー埠頭・海の森・ゲートブリッジと新たに開発されたところを回り、湾岸道路から葛西臨海公園駅で終点。深川は国会から霞が関・日比谷通り・第一京浜・浜松町駅からかつての[虹01](浜松町駅~東京ビッグサイト)を思い出す経路でレインボーブリッジを渡り、お台場を一周して豊洲市場・新豊洲駅から有明営業所の目の前を通り過ぎ、国際展示場駅で終点となった。
都営バス現役車撮影会
第三部は目玉のミステリーツアー出発後で不在となった穴を埋めるべく、一般車・スカニア・燃料電池・観光車が勢揃いして特別表示になった。復刻がなかった営業所からそれぞれ選ばれており、直営で全く出展がなかったのは練馬・北・青梅だった。
表示は専用の祝・100周年表示が用意され、かなり気合の入った表示だった。各車に入れてほしいくらいである。
K-E007…観光車
A-F169…燃料電池バス
J-D921…スカニアフルフラットバス
T-E520…一般車
14:00とともに撮影会は終了し、片付けとともに順次撤収していった。
会場内の出展
整理券エリアのテント出展は、「都営バスグッズ」「記念一日券販売」「100周年記念展示」「協賛各社ブース」がそれぞれ並んでいた。
撮影会会場真裏は交通局ブースで、右側が採用PRブース、左側がグッズ販売で記念一日券販売と都営バスグッズコーナーに分かれ、それぞれ行列を分けていた。グッズ販売の目玉は限定販売の「都営バスピンバッジセット」(1800円)。また、一日乗車券コーナーは実際の発券機を持ち込んで100周年記念柄をリクエストに応じて発券できるというもので、大人・子供/前売・当日券/都営バス一日券(500円)・まるごときっぷ(700円)を自由な組み合わせで買えるようになっていた。枚数制限はなかった模様だが、発券に時間がかかるため行列がなかなか解消されなかった時間帯も。発行所が「営業課」になるレアな一日券だった。
出口側のコーナーは協賛各社のコーナー。バス雑誌各社の出展・販売が主で、バスグラフィックのバスコレつきのバスグラフィック既刊の特別価格販売が目立っていた。バスコレ分を考えるとかなり割安で、閉場までに売り切れになっていた。
100周年記念展示はヘッドマーク展示や100年の歴史を簡単に振り返るコーナーで、会場内ということもありじっくり見る時間がなかなかないのが残念なところ。他でも展示してくれることを期待したい。
みんくるぬいぐるみ
全みんくるファンが待ち望んだ大型ぬいぐるみが久々の発売となった。前回は90周年のみんくる15周年イベントで販売されたが、それより丸っこく大型化している。500個販売で販売列は別に作られたが、最後の時間帯になると待ち時間なしで買うことができ、販売の係員が「買うと癒されます!」と宣伝していた。
なお、翌週の「はとマルシェ」でネット限定で一般発売されたが、販売開始から1分以内に売り切れた模様で人気を見せつけた。