都営バス資料館

低床-らくらくステップバス

A代(平成7年3月)にて巣鴨に初登場した新低床バス「らくらくステップバス」。ツーステップながら段差を低くして乗り降りしやすくしたバスで、都営バス独自の低床仕様として5年間にわたって146輛(リフト付きを除く)導入された。
従来のリフト付超低床バスは特別仕様でコスト高でもあり、大量導入することができなかった。これをふまえて、低コストで実現可能な低床を検討し、いすゞ自動車に開発を依頼して導入したのが「らくらくステップバス」である。局内での略称は「新低床」であった。
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▲P-A532[タ]

A代(平成6年度)

平成7年に巣鴨に3輛(A531~533号車)が配属された。細かい型式はU-LV324K5Jとなっている。似た車輛としては、京王バスに導入された前中扉間ワンステップ車(U-LV324L改)や昭和から続く京急のワンステップ車があった。だが、京王バスに納入された車輛とはホイールベース(尺)が異なることもあり、ほぼ新規開発に近い状態で開発が行われたようだ。
交通局からの発注内容としては、「ステップ1段あたりの高さを、超低床バス並かそれ以下に低くすること」というものだった。当初のモデル車の図面では床面高が約60cm、ステップも約35cmと高くなってしまうため、この部分を18cmの2段ステップにすることで乗りやすさを実現し、さらにタイヤには偏平タイヤを装着させることで路面から第一ステップの高さを20xma低くすることにした。これにより、床面高は約63~66cmと一般的なワンステップ車よりも高くなっている。

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▲都市低床(奥)とらくらくステップ(手前)の比較、段差部分 [塩]

それ以外にも、構造が一部変更されている部分がある。都営バス仕様を詳しく見ていくと、車体部分では一般車と同じくホイールベースは4.8mだが、中扉から前側のワンステップエリアの車体設計を見直している。中扉の位置を僅かに変更しているため、既存車とは窓幅が微妙に異なっているる。さらに扁平タイヤを装着しているため、フェンダーアーチが独特の形状をしている。
屋根上には冷房用のコンデンサーが取り付けられているが、床下に冷房用コンデンサーを設置するスペースがなかったためだろう。
車内に目を向けると、中扉以降は1段高く、さらにエンジンルーム付近でもう1段床高さが高くなっている。車内に本格的な段差が初めてできたため、転倒防止にステップを目立たせている。さらに後輪軸重の関係で、中扉以後も座席は一人がけの座席が多く並んでいる。
これと同時に、乗降口の握り棒を細くして握りやすくし、視力の弱い乗客向けに黄色のカラーパイプを仕様した。

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▲中扉以降の車内座席、折り畳み座席 [塩]

中扉向かいの2席は車いす利用者用に折りたたみ椅子となっているほか、ステップ部分に車いす用のスロープを収納できるように考慮されていた。しかし、スロープを設置すると傾斜角が急になってしまうことや、当時のスロープ板の耐久性もあって、実際の設置は見送られたようだ。
足回りは他の一般車同様にリーフサスで、Z代で試験導入した自動アイドリングストップを搭載して低公害もアピールしていた。このためサブバッテリーも搭載している。
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▲P-A532[き]

B代(平成7年度)

翌年のB代(平成7年度)では、らくらくステップ車は日野・日産ディーゼルの2メーカー導入となった。前年度とは異なりエアサスを採用し、ニーリング装置と扁平タイヤを組み合わせることによってさらなる乗りやすさを実現した車両になった。
日野(KC-HU2MLCA)は品川に7輛、日デ(KC-UA460HAN)は江東に7輛登場した。日デは日野と異なりワンステップ向けのボディが架装されたため、一般より天地に伸びた大きな側面窓が特徴となっている。
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▲A-B660 [五] bu_03
▲L-B667 [五] 日産B代らくらくステップ_江東
▲日デB代車内[北]

C代(平成8年度)

平成8年度のC代では4メーカーのらくらくステップバスが揃った。リフト付きのらくらくステップバスについては詳しくは別の項参照。
この世代の前中扉間ワンステップ車は、床高が約55cmと昔の超低床バスとほぼ同じ数値になっていたが、交通局は床高よりも1段あたりステップ高さを低くすることを重視した結果、カタログモデルのワンステップ車ではなく、「らくらくステップ」を継続導入することとなった。
いすゞでは、小滝橋に通常仕様が5輛、大塚に都市新バス仕様が3輛導入された。引き続きカタログモデルの車をベースに都営バス向けのカスタマイズという扱いとなった。床高をかさ上げしたため、中扉より後方へは段差でなくスロープとなっているほか、中扉から後ろの座席が二人がけの着席定員重視のレイアウトとなった。
日野(KC-HU2MLCA)は品川・目黒・葛西に15両導入された。中扉以降の座席がすべて2人がけになり、通路が段差からスロープになった。
三菱は都市新バス仕様車(KC-MP717KVF改)が渋谷に7輌のほか、中型のらくらくステップ(KC-MJ219JUF改)が千住に7輛登場した。
日デはリフト付きのみで、一般らくらくステップ車は存在しない。
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▲G-C170[五] ch_05 (Custom)
▲T-C198[五] cm_04 (Custom)
▲B-C176[五] cm_13
▲H-C858[ア]

いすゞC代らくらく_小滝橋
▲いすゞ一般らくらく車内[北]
いすゞC代らくらく都市新_大塚
▲いすゞ都市新らくらく車内[北]
日野C代らくらくステップ_目黒
▲日野一般らくらく車内[北]
三菱C代都市新
▲三菱都市新らくらく車内[北]
三菱C代中型らくらくステップ_千住
▲三菱中型らくらく車内

C代~のいすゞのらくらくステップ車は、シャーシフレームはワンステップ車をベースに、前述のステップ対応で床高をかさ上げする等のカスタマイズがなされたようだ。エアサス・ニーリングの装備はB代と同じである。このカスタムの結果、一般的なワンステップ用の窓サイズが上下に大きいタイプのボディを載せられなかったため、一般(都市型低床)用のボディとなり、窓の大きさも通常車と同じサイズとなった。そのため、ワンステップ部分に着席していると外が見えないという問題点がメーカーを問わず見られた。

D代(平成9年度)

D代では、いすゞはIKCボディが小滝橋に3輛、富士重ボディ唯一のらくらくステップ車が1輛のみ巣鴨に登場した。窓サイズが縦方向に拡大されているのが特徴。
日野は都市新バス仕様の(KC-HU2MLCA)が杉並に10輌導入、一般車 (KC-HU2MLCA)が品川・目黒・葛西に計21輌導入された。青梅に5輛導入した中型車(KC-RJ1JJCK)もらくらくステップ仕様となっており、中扉以降の通路は段差ではなくスロープでとなっている。
三菱はC代に引き続き中型(KC-MK219JUF改)が千住に4輌導入された。
日デのらくらくステップの導入はない。
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▲P-D295
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▲D-D336[塩] dh_187 (Custom)
▲W-D867[五] dm_07 (Custom)
▲Z-D870[タ]

日野D代らくらく_品川
▲日野一般らくらく車内[北]
日野D代らくらく中型車_青梅
▲日野中型らくらく車内[北]
いすゞD代らくらく_小滝橋
▲いすゞ(IKC)らくらく車内[北]
三菱D代らくらく中型_青戸
▲三菱中型らくらく車内[北]

E代(平成10年度)

E代では、行灯廃止などの共通のコストダウンが行われている。詳しくは車輛カタログも参照。
いすゞはらくらくステップは中型(KC-LR333J)のみとなった。小滝橋に4輛導入。他社の中型と同様中扉が4枚折戸となったほか、窓が2段サッシとなりコストダウンしている。
日野はD代に引き続き都市新バス仕様(KC-HU2MLCA)が杉並に10輛導入されたほか、中型(KC-RJ1JJCK)は葛西・目黒・品川に計20輛導入された。うち品川の車輛は[市01](新橋駅~築地中央市場)用でビニールレザーシートが張られている。
三菱はC・D代に続き中型(KC-MK219JUF改)が南千住・青戸に6輌導入された。
日デは都市新バス仕様(KC-UA460HAN)が江東に8輌導入された。
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▲E-E875[き] eh_14 (Custom)
▲D-E433[五] OLYMPUS DIGITAL CAMERA
▲A-E804[ろ] em_10
▲A-E891[五] eu_03 (Custom)
▲L-E425[五]

いすゞE代らくらくステップ中型.jpg_小滝橋
▲いすゞ中型らくらく車内[北]
日野E代らくらく都市新_深川
▲日野都市新らくらく車内[北]
日野E代中型らくらく_港南
▲日野中型らくらく車内[北]
三菱E代中型らくらくステップ_南千住
▲三菱中型らくらく車内[北]
日産E代らくらくステップ_江東
▲日デ都市新らくらく車内[北]

らくらくステップはE代で見納めとなった。H代(平成13年度)でも当初はらくらくステップを半数入れる計画だったが、導入は全てノンステップとする計画に決まったためその後も復活することはなかった。5年間のみの導入に留まったのは少し惜しい。

らくらくステップはほぼ都営独自の仕様だったが、他社の導入例も存在する。例えば新潟交通では雪道の道路環境の都合上、カタログモデルのワンステップ車を導入することが難しかったようで、都営のらくらくステップ車をベースにカスタマイズした車輛を入れた。
リーフサスになったり、乗降方式の違いに合わせて、前扉だけらくらくステップ(中扉は1段ステップ)というのも興味深い点である。さらにタイヤはノーマルタイヤで長尺車となったため、元が同じでも全く雰囲気が異なるのが面白いところだ。(北天)

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