都営バス資料館

D代(H30)-スカニア

総括 いすゞ トヨタ スカニア


▲P-D905(ゆる)

▲E-D918(Yoshitaka)

▲D-D924, E-D917(P), P-D901, P-D902, K-D929, E-D913(Yoshitaka)

 初の「フルフラットノンステップバス」が29輛登場した。車内最後部まで段差がなく、通路の傾斜が一定以下の構造を特徴とする車で、スカニアシャーシ、ボディはオーストラリアのボルグレンが架装しており、一般路線車としては戦前以来と思われる外車の導入となった。
 国際的な型式はスカニアN280UB4x2EB で、オーストラリアのボルグレン(volgren) optimus の車体を架装。直列5気筒のEuro 6規制(+SCR)に対応したDC09エンジンで、トランスミッションはZF の6速AT(Ecolife 6AP1402B)となっている。日本でも型式認定を受け、2DG-NB4X2BVJ と名乗っている。局番は900台が割り当てられ、特定車が使っていた番台が久しぶりに復活した。
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▲平成30年12月の都庁でのお披露目。都知事・交通局長なども出席

 初期の5輛(D901~905)が平成30(2018)年10月に納車、まずは1輛(D902)のみが12月より運行を開始した。翌年3月には巣鴨・杉並・小滝橋・南千住の4車庫に29輛が配置され、4月にかけて本格運行を開始した。
 日本では法令により車体幅が2.5m以内と定められているが、欧米のフルフラットシティバスの車体幅は2.55mとなり、そのまま輸入しようとしても、別途特認を受けなければならない。また、欧米のバスは近年の日本のバスと異なり、「ボディメーカー」と「エンジン+シャーシメーカー」が別であることが多い。今回は、スカニアのポーランド製のN280UB E6シャーシ(日本初登場)にオーストラリアのボルグレンの車体を架装した。サイズや各種基準等を日本のものに合わせたカスタム仕様として、そのまま日本で走れる車となっている。
 価格は1輛あたり約3,500万円となる。通常のノンステップバスと比べ約1,000万円高いのは、欧米仕様を日本国内向けに改造している事や、交通局独自仕様を取り付けているためで、今後は量産効果などで価格差は縮まる可能性もある。
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 車体はエンジンルームをリアに集中させて床高を低くし、また客席スペースを既存車輛に近い空間を確保したことから車長は11.04mで、都営の一般路線車と比べて0.5m長い標準尺相当となっている。幅は2.49m、高さは3.18mとなっており、一般的なノンステップバスよりも車高は高めである。また、フロントオーバーハングも一般的なノンステップバスよりも50cm程度長い。このため、車輪部までの最小回転半径はD代エルガの8.3m、観光バスガーラ12m車の8.7mと比べても長い9.5mに、直角に右折する先の必要な道路幅はD代エルガの6.0mに比べて長く、ガーラ12mの6.6mとほぼ同じ6.5mとなっており、制約も大きい。
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▲液だれ防止

 他に目立つのは、液だれを防止する給油口・尿素水口の真下に貼られた銀色の金属板だろうか。外にあった扉用の非常ボタンは特に日本語の注意書きもなく"EMERGENCY"が目立っていたが、営業開始時までに埋められた。給油口などは並んでいて間違えを防止するためか、フタを開けるとフタ側に「軽油」などと大書されている。前扉はグライドスライドドア、中扉はプラグドアを搭載。中扉は燃料電池と同じメーカーのものである。中扉に反転式スロープ板と可搬式スロープ板が搭載されているのは交通局の既存車と同じである。
 リヤアクスルとATトランスミッションにはZF製トルクコンバーター式トランスミッション“Ecolife”を採用。メーカー標準仕様・6速ATでリターダーとアイドリングストップ機構を標準装備している模様。

▲反転式スロープ・運転席

 運転席操作系は欧米仕様をそのまま踏襲しており、ATのセレクタボタンはR・N・Dしか存在しない。また、運転席周りの多くボタンがピクトグラムによる表記が行われている。JRバス関東のスカニア製ダブルデッカー車は後付けで日本語表記をテプラで作成したのに対し、こちらは当初から日本語表記が取り付けられている。「非常用ハンマー」の表記があるが、非常扉以外にも海外のように備えているのだろうか。
 自家用車の輸入車と同じくウインカーが左右逆で、ホイールパークブレーキは右手側の脇に取り付けられている。
運転感覚を揃える要望があったためか、本年に入って各車にウィンカースイッチを右手でも操作できるような補助レバーが新たに取り付けられた。右手側の操作がそのまま左側に伝達されるアナログな仕組みとなっているようだ。なお、特にこれを使わなくとも左手側で操作も可能となっている。

▲ウィンカーレバー、車内、非常口跳ね上げ座席など
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 メーター類は左側にエンジン回転計、右側に110km/h対応の速度計。二つのメータークラスタの間にインフォメーションモニターを搭載している。そして都営バス向けの音声合成装置モニタ・操作盤等を搭載していることから、運転席はかなり窮屈な印象を覚える。
 車内座席レイアウトは既存車輛になるべく近い座席配置だが、最後尾から2列目はタイヤハウスに1人掛け椅子が取り付けられている。最後列は非常口通路となるため、跳ね上げ可能である。床材は今までと異なり、滑り止めでザラザラした材質の木目調となっている。
 当初は最後尾から2列目は1.5人掛けの座席が取り付けられていたが、営業前になって1人掛けに交換された。優先席は現在の国土交通省の標準仕様とは異なり、横向きである。真下に燃料タンクがあるためだろう。混雑時にも奥まで詰めやすくはなったものの、後輪タイヤハウスの都合もあり通路や最後列の座席はやや狭い。そのため、他に人がいた場合の出入りはやや難がある。
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 また、オリジナル仕様で一部の壁(左右6席)にはUSBポートが取り付けられており、コードを持参すれば充電ができる。渋谷の1輛のみ試験的に付けられて以来増えなかったが、ここにきて今の時代にあったありがたい取り組みだ。
取り付けられている座席はヨーロッパ車らしく、FRP成形らしき固めの座席だ。ドイツのKiel(キール)製で、これも軽量化と製造のしやすさを目的としたのだろう。モケットはフルフラット専用の特注品で、みんくると都のシンボルマークを組み合わせた幾何学模様となっている。輸入時は一般席が黒、優先席が赤の模様のモケットだったが、後にみんくるモケットに張り替えられたようだ。一般席は青色、優先席は水色となっており、中扉直後の4席も優先席の水色で計7席となっている。
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 照明はLEDライトが両脇から照らす間接照明となっている。メーカー標準機能で、ドア開からドア閉後しばらく経つまでは照明が明るくなっている。乗客が車内移動をするタイミングなので、暗くならないようにしているのだろう。

▲間接照明。他の一般車より車内はかなり明るい。
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 中扉天井には燃料電池と同じタイプの横長の次停留所案内液晶が取り付けられて、後ろ側からも見やすくなっている。前扉寄りの天井に「つぎとまります」のような表示や次停留所装置を埋め込めるスペースがあり、海外では活用されているが、今回は中扉上の装置があるため、該当部分は単なるアクリル板のオブジェとなっている。
 吊り革は横向きの優先席の部分だけツルツルの黄色、それ以外は持ち手の部分がデコボコしてグリップしやすい灰色のものが取り付けられている。このタイプの吊り革は都営バス初。
 前面・背面の局番札はなく、前扉にも局番表記はない。そのかわり、フロント上に局番が書かれており、スカニアの立体ロゴが輝いている。都営バスでメーカーロゴは珍しい。リアの「VOLGREN」ロゴも含めて新しい感覚だ。


▲D901のリア

D901, D906は初期ロットの車となるが、これらのみリアパネルの黒い部分のビスの数が多いのが見た目の違いとなる。他にも細かい差分があるかもしれないが未確認。
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 欧米諸国では左ハンドルのため、フルフラットを実現するためにリヤアクスルやエンジン・トルコン・パワートレーンなどを左側に集中配置するように設計されている。今回のスカニア車は日本仕様の右ハンドル仕様にして製造していることから、扉位置や通路・座席に制約が出てきてしまい、「使いやすい」フルフラットにすることは難しい面も多い。
 一方、日本国内メーカーは国内市場の縮小やノンステップ標準仕様の固定化で、前中扉間のノンステップ仕様でお茶を濁してきたのは否めない。日本のメーカーが今後ノンステップバスをさらに進化したものにするのであれば、ういったフルフラットノンステップバスは避けて通れない問題であろう。東京都交通局が黒船とも言える外国車を導入したことで、国内メーカーはどのような手を打つか。そして外国メーカーの改良で日本市場を見据えた右ハンドル対応の「さらに進化したノンステップバス」を作るのか、今後が楽しみなところだ。

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