令和3(2021)年度導入のG代は「三菱ふそうトラック・バス」が落札し、Y代以来8年ぶりの三菱車となった。都営バスでは初のMP38シリーズ(2PG-MP38FK)となった。アイドリングストップ&スタートシステムとEDSS(Emergency Driving Stop System:ドライバー異常時対応システム)が標準搭載された2015年標準仕様ノンステップバス認定要領モデルである。
本年に入ってから製造が開始され、東京2020大会の輸送を見据えて5月上旬より順次納入を開始。7月までに全140台が出揃った。うち7割が大会輸送を前提とした有明営業所(海の森車庫)の配置となっており、営業所記号が車体に書かれていないのが特徴。残りは直営の各営業所・支所に直納されているが、運賃箱が搭載されていない仕様も存在する。
P-G810(みなふく)
(Yoshitaka)
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局番
これまで、都営バスの局番は百の位を貸切車・特定車・大型車・中型車で分けており、800台は中型車向けの局番として割り当てられていたが、G700~843と800番台も割り当てられるようになった。中型車は今後導入しない意思なのだろうか。
外観
MP38シリーズは平成26(2014)年8月に販売開始しており、前モデル(MP37シリーズ)と比較してライト周りのデザインが変わったのが区別のポイント。前モデルでは左右横に2灯並んだヘッドライトだったのが、本車では左右1灯ずつのデザインで、ロービームにディスチャージヘッドランプを採用した。前面形状もフロントパネル内部機器のメンテナンスが容易なデザインに変更され、非常に目立つデザインとなった。
前面はライト部分とバンパーが艶ありブラックで、フロントパネルが都営バス標準の緑色になり上手にまとまったデザイン。側面は窓まわりと扉上部が黒に塗られており、Y代までは車体色だった側窓下部もノンステップエリアの窓サイズに合わせて黒で塗られ、引き締まった外見になった。
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路肩灯はLED式が標準搭載されたほか、テールライトにもLED式を採用して視認性向上を図られている。
標準仕様では左サイドミラー部分に左折確認用のカメラが設置されているが、都営仕様では設置されず、その代わりドライブレコーダー用カメラをサイドミラー上部に設置した。
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行先表示器はオージの白色LED表示器を搭載した。昨年度に江東のB代で試験設置されたもので、側面は5列短冊式の旧型と同じドット数である。表示の輝度は優れているが、昨年度導入車までフルカラー・フルドットだったことから考えると、コスト面の折り合いが色濃く出てる部分だろう。
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屋根上のエアコンも特徴的で、標準仕様のデンソー製ではなく三菱重工業製を搭載している。以前の都営の搭載に合わせたのかは不明。ベンチレーター(換気口)も従来通りラインクロスファンを2個搭載している。屋根上にはF代エルガ同様、都章と局番が書かれている。
全長は10,705mm、ホイールベースは4995mmと車内レイアウトの都合もあり前モデルより200mm程度長くなっている。ここで気になるのが回転最小半径だがこれまでの8.0mから8.3mと大きくなってしまったが、取り回しが悪化しないよう設計されているという。
駆動面・足回り
エンジンは三菱ふそう製直列6気筒の6M60(T2)エンジンを搭載。インタークーラーターボと組み合わせて270PSの出力を誇る。細かいところではラジエターファンの軸部分の改良が行われており、エネルギー伝達損失の低減と燃焼効率向上が図られている。
変速機は前モデル同様アリソントランスミッション製のTシリーズ・トルクコンバーター式6速ATを搭載した。ギア比そのものは4速で直結。5速と6速はODに設定されているが、トルコンATの変速プログラムをより最適化したことで前モデル以上の省燃費運転が可能となっている。
セレクターボタンはY代と同じレイアウトになっている。また混雑時などトルクが必要なシーン向けに、セレクターボタンのモードセレクトからPOWERモードを選択することで、最大限に力を引き出すタイミングでシフトアップするようプログラムされている。
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▲運転席
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加えてダッシュボードにはECOスイッチが用意されており、スイッチをONにする事でアクセルペダルを踏みすぎた場合でもインジェクタからの燃料噴射量を制御することで加速度リミッターが動作し省燃費運転に寄与する事が可能だ。
なお、ECOスイッチとトルコンATのPOWERモードはそれぞれ別に制御されるプログラムの模様。
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アイドリングストップ&スタートシステムももちろん搭載され、解除しても自動でアイドリングストップ機構がONに戻る「自動切替」仕様。このタイプの場合、平成27年度重量車燃費達成基準+5%達成することになるため、排ガス規制記号が「2PG-」となる。
排ガス浄化装置は前モデル同様、ダイムラーAGのブルーテックと連続制御式DPFを搭載。AdBlueのタンクは40リットルの容量がある。また、年々排出ガス低減技術が精密化していることから、J-OBD II(車載式故障診断装置システム)に関する法令にも対応した。
車内・内装
車内はEDSSの非常ブレーキボタンが運転席と最前部座席との仕切りに設置され、EDSS動作を示すランプが天井に設置
された。また室内照明にはY代同様LED照明が使われている。
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2015年標準仕様ノンステップバス認定要領に対応した仕様が各所に反映され、中扉には反転式スロープ板が備えられた。加えて都営仕様として、前年度に続き可搬式折りたたみスロープ板を中扉脇に設置している。
前面の局番札は省略され、前扉脇の壁に局番が書かれるようになった。背面は札ありで、前扉内側の局番表記も継続。
座席レイアウトは前モデルのY代車では優先席が3席分横向きに置かれ、その下に燃料タンクも横向きで設置されていたが、G代では燃料タンクの位置を助手席側タイヤハウス後方に樹脂製燃料タンク(容量155L)を縦置きで設置し、フラットになったところに優先席として前向き座席2席分設置。この結果、ホイールベースと車長が195mm伸びた。
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また、二人乗りベビーカー乗車時や混雑時の対策も兼ねて、中扉前には燃料電池バス同様のフリースペースが設置された。折り畳み座席も設置されていないのが特徴的で、ノンステップエリアの運転席側は2席のみとなっている。燃料電池で採用された跳ね上げ座席の設置も検討されたが、納期や車内レイアウト等の面で断念された模様。
これらで着席定員が減ることを補うため、前扉直後の両側にも座席を設置したほか、中扉直後2列が1+2名掛けとなった。
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▲後部座席
前モデルでは着席しにくかった前タイヤハウス上の座席だが、座面を前モデルと比較し30mm低くなり、またステップ形状を見直すことで着席しやすいように改良されている。しかし都営バスでは新型コロナウィルス感染防止対策として運転席直後および前扉直後の座席は使用禁止としているため、それらの改良点を体感できないのは残念。
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中扉以後の座席レイアウトはラッシュ型と都市型仕様の中間で、中扉直後2列が2名+1名、それ以降が2人掛けとなった。最後部座席は急ブレーキ時の事故を防ぐため中央部に巨大な肘掛けを設置して中央に着席できないようにされ、実質4人掛けとなった。座席定員は24名で、Y代の26席より2席少なく、新型エルガのB~E代の都区内仕様より2席多い。
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運転席はアクセルペダル形状を吊り下げ式に変更した。これにより「アクセルワークの効率性を高め運転操作性の向上と燃費改善に寄与」とメーカーが記しており、ベタ踏みしにくくすることで燃費改善なのかもしれない。