都営バス資料館

学03

[学03]←[53]

担当営業所

渋谷営業所

運行区間・運行回数

系統・枝番 起点、経由地、終点           備考 キロ程(往/復) 平日 土曜 休日
学03 渋谷駅~東4~日赤医療センター 2.470/1.780km 166 166 147 147 118 118
学03乙 渋谷駅←(急行)←聖心女子大学(臨時) 0.810km ** ** ** ** ** **
学03折返-1 渋谷駅←(急行)←東京女学館(構内) 1.460km ** ** ** ** ** **
学03折返-2 渋谷駅←(急行)←国学院大学(臨時) 1.100km ** ** ** ** ** **


現在

年表

系統 年月日 営業所 距離 概要               
学4/53 S25.9.18 渋谷 2.380km 渋谷駅~赤十字病院が開通
53 S29.8.1 渋谷 2.935/2.965km 渋谷駅発のみ八幡通一丁目経由に変更
53 S41.3.10 渋谷 (2.530km) 渋谷駅~実践女子の経路を六本木通り経由に変更
学03 S47.11.12 渋谷 *** 新番号化、学03とする
学03 S47.11頃 渋谷 *** 終点の停留所名を日赤医療センター別館とする
学03 S51.4.1 渋谷 2.490/1.900km 渋谷駅~日赤医療センター(新)に変更短縮
学03急行 H15.9.3 渋谷 *** 東京女学館→(直行)→渋谷駅を開設
学03 H18.4.7 渋谷 4.250km 再開発に伴い東四丁目~日赤医療センターの経路を変更、循環化
学03急行 H15.9.3 渋谷 *** 同じく経路変更
学03 H19.3.26 渋谷 2.470/1.780km 日赤医療センターで一旦運行を打ち切るよう変更

路線概要

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 渋谷駅と渋谷区東の日赤医療センターを結ぶ。日赤医療センターや国学院大学・実践・東京女学館のある渋谷区広尾・東の一帯は、駅から少し離れていることや、台地になっていて坂があることもあり、渋谷・恵比寿からそれぞれバスが運行されている([学06]も参照)。沿線には学校が多いので、学バスとなっており、1乗車170円で乗車可能だ。客層は学生、日赤への通院客はもとより、住民の足にも重宝されている。
 [学03]は意外な狭隘路線でもあり、六本木通りを除けば終点の日赤医療センターまで全てすれ違うのがやっとという幅員の道路である。なかでも渋谷駅方向の青山学院初等部から六本木通りに出る区間や、東4丁目~東京女学館の狭隘区間と摺鉢状の坂は見物で、バスが3分に1本やって来る中でのすれ違いは、[学03]の一番の見せ場といえるだろう。
 渋谷駅は東西自由通路、東横線改札の目の前という一等地を数十年間キープしており、整列のための柵も設けられている。渋谷駅を出発すると[都01](渋谷駅~六本木駅~新橋駅)と同じく六本木通りに入り、渋谷警察署前の坂を上る。上りきったところには渋谷三丁目の停留所がある。
 この先は往復で多少経路が異なり、渋谷駅発は直進して青山トンネルを抜け、次の渋谷四丁目交差点で右折して常盤松交番の小道に入る。乗用車で片側1車線がやっとという幅で、急坂と直角カーブもあるため腕の見せ所とも言える。右手に青山学院初等部の敷地を見ながら進むと突き当りの鬱蒼と茂る緑は実践女子の敷地。そして左に曲がると國學院大學のキャンパスと、様々な学校が集まっている。停留所も学校関係の名前が多い。渋谷駅行きは実践女子の敷地に沿うように一方通行の道路を進み、先ほどの青山トンネルの渋谷方入口脇に出るようにショートカットしている。
 國學院大學の先で左折し、キャンパス間の連絡通路の間の小道を走ると、駒沢通りとクロスして「東四丁目」停留所に停車する。駒沢通りから見ると、小道からバスが現れ、そのまま直進して小道へと抜けていくように見えるのが面白い。
 このまま住宅街の中を進み、緩やかに坂を下ると今度はすぐに上り坂と傾斜が急な台地地形であることがうかがえる。左手に東京女学館の校舎が見えれば、正面には終点の日赤医療センターの真新しい建物が見えてくる。
日赤前を左折し、女学館の正門前に設けられた東京女学館(降車専用)停留所に停まると、Uターンするように日赤の構内に入り、日赤医療センターで終点となる。この2停留所は目の前で、直線距離では30m程度しか離れていないが、これにも経緯がある。詳しくは歴史の項で述べよう。日赤医療センターはここ数年で新たに建て替えられ、かつての敷地は広尾ガーデンフォレストとして高級低層マンションに生まれ変わった。
 終点の日赤医療センターから病院の裏手を抜け、広尾ガーデンヒルズから急坂を下りると外苑西通りの日赤医療センター下停留所([黒77](目黒駅~千駄ヶ谷駅)、[品97](品川駅~新宿駅西口))に抜けることができる。
 また、平日の午後のみ下校用に東京女学館の構内から渋谷駅へ急行バスが運行されている。構内に専用のポールが置かれ、門扉から出ると日赤医療センターの構内を回り、[学03]と同じ経路で途中無停車で渋谷駅に向かう。

歴史

 渋谷駅からこの地域に向けてバス路線が設定されたのは戦後のことである。恵比寿側が戦前からあったのに比べると意外だが、東京横浜電鉄と東京市の営業エリアに跨っていたこともあったのだろうか。戦前の歴史については、この後の[学06]の項を参照のこと。
 学バスは、戦後、通学する学生の便宜を図るために、安価で短距離を運転するバスとして設定され始めたものであり、昭和24年7月に[50]東大~御茶ノ水駅(→[学07])、[51]東大~上野駅(→[学01])、[52]高田馬場駅~早大正門(→[学02])が開通したのが始まりである。これらに続く第四弾として、昭和25年9月に開通したのが当路線[53]渋谷駅~日赤病院であった。沿線に学校が多く、学バス設定にはうってつけだったのだろう。運賃は往復で一般系統と同額(15円)という設定で、現在と比べてかなり割安感のある設定だった。
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▲昭和26年6月現在
 開通当時の推定経路が上の図である。まだ六本木通りも青山トンネルもなく、青山通りに出て青山学院大学の手前を右折し、現在はハチ公バスが通る青山学院脇(下写真)を抜け、道なりに実践女子まで抜けていた。現在の六本木通りをまたぐ部分もかなりの狭隘路で、今は六本木通りと首都高によって完全に分断され横断ができなくなっている。
 終点の日赤医療センターは、東京女学館を少し過ぎ、赤十字病院のかつての入口から構内に入っていたことは確実だが、終点がどのあたりにあったのかは正確には不明である。例えば下図では終点の産院名も資料によってまちまちだが、ここでは「日本赤十字産院」としておこう。
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東京都地図地名総覧(人文社、昭和35)
 停留所は当初から密に設置されており、あまり今と変わりがない。消滅した停留所としては「青山学院」停留所がある。現在の青山通り上にある同名の停留所と異なり、現在のハチ公バスの青山学院西門停留所付近に存在した。
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▲昭和35年10月現在
 昭和29年8月に渋谷駅発の経路が変更され、明治通りを南下して並木橋の交差点を左折して八幡坂を上るようになり、途中に「八幡通一丁目」が増設された(上図)。ちょうど金王神社の交差点のあたりである。経路変更の意図は不明だが、何らかの要請でもあったのだろうか。
 同時期に、羽沢町(現・東四丁目)と赤十字病院停留所が増設された。前者は近くに学校がなかったので設置されなかったのだろうが、一般乗客の利用も増えたためだろう。後者は日赤医療センター内に停留所を増やしたもので、病院・産院と2つの停留所が出来たことになる。元々は日本赤十字社産院と日本赤十字社中央病院という別々の施設だった。入口から見て手前に病院、奥に産院があった。元々は日本赤十字社産院と日本赤十字社中央病院という別々の施設だったためである。
 この経路変更とともに、渋谷駅の乗り場も旧東急文化会館(現在はヒカリエ建設中)側に移動し、銀座線脇の画材のウエマツ付近が乗り場となった。
 その後、首都高渋谷線の建設とともに下道となる六本木通りの渋谷駅~高樹町交差点の区間が開通し、昭和41年3月に渋谷駅~実践女子学園の経路が六本木通り経由に変更され、大幅に経路が切り替わって現在の経路となった。同時に青山学院停留所は廃止され六本木通り上の青山学院高等部停留所に移設、青山学院中等部停留所(旧女子部停留所)も実践女子寄りに移設され、青山学院初等部に改称した。
移設により青山学院初等部の停留所が実践女子学院とかなり近くなったため、実践女子の停留所は渋谷駅方面のみ停車に改められた。同時にワンマン化がなされた。経路変更は、ワンマン運行の支障とならないとの意図もあったのだろう。
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▲上:昭和38年(国土地理院, goo地図) 下部の太い道路が六本木通り
下:昭和54年(国土交通省, 国土情報Webマッピングシステム)
昭和47年には新系統番号となった。同時期に日赤病院と産院が統合されて日赤医療センターとなり、病院は「日赤医療センター本館」、産院は「日赤医療センター別館」に変更された。ただし、案内上の行き先は「日赤医療センター」で統一されていた。そして昭和51年4月に日赤医療センター別館~本館が廃止され、新たな日赤医療センターの構内終点へと変更された。
この後20年余りは経路に変化はなかった。青山学院高等部停留所が平成5年頃にエイボンギャラリーに、さらにすぐ後に渋谷三丁目に改称された程度である。
[学03]は乗客数・収支ともに上位で、非常に効率のよい路線であった。昭和54年度は収支係数50(100円の収入に対して支出が50円)と優良ぶりがうかがえる。
 変化が起こるのは、日赤医療センターの再開発が本格的になってからである。まずは平成15年には東京女学館~渋谷駅の急行が運転を開始したが、これについては後述しよう。平成16年12月に日赤は再開発案を提示した。現在の医療センターを南側に移して再構築し、医療センターのあった部分は新たに集合住宅とする案である。周辺住民や女学館からの反対はあったが、工事は少しずつ進んだ。
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▲平成18年初頭
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▲平成18年春の改編後
 平成18年4月には旧来の日赤医療センターのロータリーは閉鎖され、これに伴い「東京女学館」停留所の渋谷方面は廃止、「日赤医療センター」停留所が移設された。新しい日赤医療センターの入口は東京女学館正門の向かいに設けられ、従来の日赤方面「東京女学館」停留所は降車専用となった。
さらに、新しい門からUターンするように入ってすぐの建設中のマンションの前に停留所が新設されたが、ここも「東京女学館」停留所を名乗った。つまり、新しい経路では東京女学館は2回停車となった。その先に病院のロータリーがあり、病院脇に新「日赤医療センター」停留所が新設され、直進して出口門を抜けると、従来の渋谷・恵比寿方面の東京女学館停留所のあった辺りに抜け、次に停車する停留所は「東四丁目」となった。
 女学館の生徒の下校の利便性を保つため、路線形態も循環線に改められた。つまり、日赤医療センターで終点とならず、女学館の生徒が乗車する際は、日赤構内に設けられた女学館停留所から乗車し、日赤をまたいで渋谷駅・恵比寿駅まで行けるようになった。日赤構内にありながら「東京女学館」と名乗るのも変ではあるが、降車専用の停留所の位置だと正門の前で歩道も狭く、他の通行者の妨げになると考えられたのだろう。現在も正門前が降車専用の扱いなのは変わりなく、終点の1つ手前だからといって停留所に「降車専用」と明記しているのは珍しい。
 方向幕も今までの双方向兼用から往復別のものに改められ、学バスとしては初めて往復別の表示となった。従来の「渋谷駅-日赤医療センター」の表示に慣れていた目には新鮮に映った。
 方向幕も今までの双方向兼用から往復別のものに改められ、学バスとしては初めて往復別の表示となった。従来の「渋谷駅-日赤医療センター」の表示に慣れていた目には新鮮に映る。電光表示(LED)の行先表示の車は導入時から一足先に往復別の表示をしていたが、方向幕もそれに追従したと言える。
 ただし、この変更には女学館は一貫して懸念を示し、日赤医療センターからの生徒の乗車を主張していた。女学館の生徒は、下校時は女学館の停留所から乗車する決まりになっていたが、下校時に女学館の生徒を乗せて日赤医療センターに到着したバスが、日赤で多数の待ち客がいて積み残しになった際に、先に乗っていた女学館の生徒を降ろす指示が出るなどのトラブルもあったようだ。
 このトリッキーな取り扱いは1年限りとなり、平成19年2月下旬に各停留所に新たな案内が出た。経路は変わらないものの、循環運行を廃して日赤医療センターで一旦終点とするという内容で、女学館の主張が認められたことになった。これに際し、日赤医療センターの乗り場が向かいに変更された。特に[学06]用のバス停は今までの東京女学館の停留所位置とほぼ同じである。同時に、[学03]は学生と一般の列を別々に作ることで対処した。現在は、17:30以降は学生と一般客が交互乗車という案内が停留所に出ている。
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▲平成19年春

 この際に方向幕は変更されず、従来は東四丁目発車後に日赤医療センター行きの幕から渋谷駅・恵比寿駅行きの幕に切り替えていたのが、日赤医療センター到着後に切り替えるようになった程度である。その後は日赤の乗り場整備に伴い、[学03]の乗り場は病院受付前の目の前となり、上屋も整備されていった。これで一応の完成形となりそうである。

東京女学館直行便

 渋谷の白鳥とも呼ばれ、多くの制服ファンの間でも有名な東京女学館。明治21年開校の歴史ある学校で、「東京女子高制服図鑑(森伸之著)」などでも絶賛されているその制服は、夏服も冬服も白のセーラー服(冬服はクリーム色)であり、純白の制服は、渋谷界隈ではひときわ輝いて見える……のはともかくバスの話。
 東京女学館はその立地ゆえ、生徒の多くは学バスを使う。下校時は道路が狭いこともあり、待つ際の混乱を防ぐため、[学03]を待つ生徒はバス停から日赤側へ、[学06]を待つ生徒はバス停から渋谷側へと並ぶする等、独特の決まりがあったようだ。都営バスの上得意であるが、登下校時間帯に生徒が集中することもあり、専用バスは前々から学校からの要望として挙がっていたようだ。平成15年になって渋谷駅~東京女学館の急行バスがついに設定された。
 ここで興味深いのは、構内にわざわざ専用の停留所を設けたことである。運賃は学バスと同じ、時刻表も掲示され、一般路線と変わりがない。ということは、規則上は一般乗客も乗れる。しかし、女学館の構内はそもそも部外者が立ち入れるような雰囲気ではなく、渋谷駅まで無停車のため、都営バス全路線中最も乗車が困難な系統と言えよう。言い換えれば、女学館の生徒または平成15年以降卒業の同校OGしか、都営バスの真の完乗はできないと言うことである。
 経路については、女学館を出て東四丁目方面に直接Uターンできないため、一旦日赤医療センター構内に入り構内を一周して折り返すという面白い経路になっている。また、急行運転開始に備え、[学03]の渋谷方面の各停留所には「急行バスが運転を開始します。ここからは乗れません」というお知らせが掲示された。
 方向幕も「学03 急行・東京女学館-渋谷駅」と専用のものが新たに加わった。渋谷駅発の設定もあり、女学館行きの直行も作るつもりだったのかもしれない。なぜか双方向兼用式になっているのが、「東京女学館-渋谷駅」と「渋谷駅-東京女学館」の2種類があるため、指定ミスではないかと思われる。LED表示では「学03 急行 東京女学館」という行先表示もちゃんと用意されているが、もちろん未使用である。
 中高生専門の輸送にあたる都営バスとしては[学05乙]目白駅~独協学園(昭和36年9月開通、昭和60年3月廃止)があったが、それ以来と言えるだろう。

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